明けましておめでとうございます。
平成最後のお正月を特別な思いで迎えました。
私は猪年の年女、今年は還暦を迎えます。
父が膵臓癌で亡くなったのが還暦の年。
親が亡くなった年齢になるのは特別な思いがあります。
母は肺がんで他界しました。
彼女は病気を克服したい一心で、毎日1リットルの牛乳を飲み、弱った体で努めて牛肉を食べるようにしていました。
そして菓子パンやクッキーを食べるのを楽しみにしていました。
彼女よりも喜んでいたのは癌細胞とは知らずに。
私が食と栄養について真剣に学び始める1年前のことです。
私の生活が一変したのは、2011年3月11日の東日本大震災に伴う原発事故からです。
原子力汚染を懸念して、安全な食品を手に入れる術を調べたのが、栄養学を学び始めたきっかけです。
調べるうちに、当たり前と思っていた常識が間違っていたこと、体を作るのは食べ物なのに、医学部でも臨床現場でも、健康のために何を食べるべきかを学ぶことも考えることもしてこなかったことに気がつきました。
タンパク質を摂るには肉、カルシウムを摂るには乳製品、感染予防には抗生剤。
当たり前と思っていたことがまったく逆だったことにあぜんとしました。
しかし、それらは新しい事実ではなく、私が目を向けてこなかっただけなのです。
栄養学を学んでほどなくして、食習慣と病気の関連を解明した栄養学者のコリン・キャンベル先生の著書『The China Study』に出会いました。
すぐに本で紹介されているJ・マクドゥガル先生のプログラムに参加し、半年後には「Plant-Based Whole Foods(プラントベースドホールフーズ※)」が人間の健康にとって最善であるという結論に行きつきました。
私自身、一切の動物性食品(特に乳製品)とジャンクフードを排除し、砂糖や化学調味料、そして電子レンジを捨て、プラントベースドホールフーズを実践しました。
すると、過労が原因と思っていた貧血や立ちくらみ、過敏性大腸炎が治り、風邪をひかなくなりました。
以前と比べものにならないくらい体調が良いのです。
最善の食とはプラントベースドホールフーズであることを、身をもって確信しました。
私はこれまで、患者様に有益な情報をお伝えすることをモットーに臨床をおこなってきました。
だから、「食とライフスタイルで最高の健康が手に入る」という事実を患者様にお知らせするためのオーガニックレストラン「CHOICE」をオープンさせたのは必然でした(2015年に「gluten-free & vegan」にリニューアル)。
プラントリシャンという仕事
アメリカでは、癌や糖尿病、高血圧、虚血性心疾患、多発性硬化症や関節リウマチなどの自己免疫疾患に代表される生活習慣病を、薬ではなくプラントベースドホールフーズを軸に、ライフスタイルの改善により治療をおこなう「プラントリシャン」という医師たちが活躍し、植物性食品と病気の予防・治療に関する研究論文が多数発表されています。
プラントベースドホールフーズはまだ認知度が低く、その健康効果について理解を示してくださる方は少数派であることは否めません。
でも、この考えを普及させる活動を止めるわけにはいきません。
そこで、2017年に、コリン・キャンベル先生の著書『Low Carb Fraud』を翻訳した『低炭水化物ダイエットへの警鐘』を出版しました。
今年はその著書の基となった『WHOLE』を監訳出版予定です。
還暦といえば引退を考えるころでしょうが、私は大好きなクリニックでの仕事をまだまだ続けたいし、他にもやるべき仕事がたくさんあります。
8年前に比べ、健康で若返ったと患者さんによく言われるのですが、私自身もそれを実感しています。
還暦万歳!
※精製加工しない植物性食品を主体とした食事