末期がんで余命宣告を受けたものの、21年後の現在もお元気に過ごしておられる八坂正博氏の症例をご紹介しています。先月号の続きです。
「余命6ヶ月」との宣告から3年、がんをコントロールしてこられた八坂氏ですが、気の緩みから徐々に食生活が乱れるようになって3ヶ月が過ぎたころ、頸部と胸壁にがんの再発を告げられました。すでに許容量上限を超えていたため放射線療法はおこなえませんでしたが、運良く大学病院にあったハイパーサーミア治療(がん細胞は高温で死滅しやすく、がん細胞を排除する免疫は高温のほうが働きやすいことを利用した主に代替医療や統合医療で用いられる装置)を抗がん剤治療と並行して6ヶ月間受けることができました。
ハイパーサーミア治療の後、顎部転移巣が消失し、左胸部には効果がなかったと医師から告げられました。ところが、後の検査で左胸部のがんもいつの間にか治っていたことわかります。実は転移がわかった時点から、食事を厳格な甲田療法に戻していた八坂氏には、がんが消えるときの自覚があったといいます。「左胸部のがんは残念ながら治らなかった」と告げられた1〜2ケ月後、左胸の赤みと痛みが一瞬にして消えたのです。「いつの間にか治っていた」というのは、医療者側から見た見地に過ぎないのです。
がんをコントロールする
再発以降、厳密な食事療法を守っていましたが、がん宣告から5年以上経過したころに、再び食生活が乱れます。3〜4ヶ月後、左肩に4cm位の隆起があることに気づきます。がんの再再発です。医師からは、もう治療ができない状態であると告げられ、自宅かホスピスか最期を迎える場所の選択を迫られました。八坂氏は自宅に戻ることを選択し、甲田療法の半断食をおこないました。するとわずか3日でこぶの赤みが消失、1週間で隆起と痛みが消失しました。西洋医学で治療ができないと言われた八坂氏ですが、その後11年間甲田療法を基本とした生野菜中心の食事を続けておられます。がんは身体に存在しますが、大きくなる気配はなく共存状態を保っていらっしゃいます。
乳酸菌の効用
今でこそ腸内環境が健康の決め手という認識が一般的ですが、滋賀県高島市では昔から「病気になったら鮒寿司を食べる」という風習が引き継がれています。八坂氏は自分以外にも地元の乳酸菌が多くの人の健康に役立つと考え、米を鮒寿司由来の乳酸菌で発酵させたヨーグルト様食品を開発し「アレルノン」と名づけ商品化されました。製品は医療機関で検証をおこない、アトピー性皮膚炎の改善にも効果があるとの実証を得ています。少しの魚や卵を食べるなど、厳密な甲田療法から少し緩めた食事を摂ることを可能にしているのは、1日3回食べるアルノンのおかげだと確信しておられます。
がんが消えた
時々CHOICEにお越しになったときに近況を伺っていたのですが、一昨年の初めからしばらくお顔を拝見していませんでした。COVID-19は八坂氏のように基礎疾患がある方には注意が必要です。きっと外出を控えられているのだろうという私の心配に反して昨年春に驚くべきお話を伺えました。ご自分のリスクが高いと自覚されていた八坂氏は、かねてからの食養生に加え、納豆、山芋、オクラ、なめこ、モロヘイヤなど俗に言うネバネバ食品を意識的に摂るようにしておられたといいます。すると直近の検査でがんが消滅していることがわかったのです。2000年に余命宣告されてからご自身でコントロールし、がんと共存してこられましたが、COVID-19の逆境下でついにがんを克服されたのです。70歳になられる八坂氏ですが、今後もご活躍されるに違いありません。