先月号でがんばる女性の副腎が疲労しがちであることを書きました。
副腎は身体の中で一番多くのビタミンCを消費する臓器です。病気などストレスに晒されると抗ストレスホルモンを分泌するため、副腎はさらに多くのビタミンCを消費します。ヒトは自分でビタミンCを作ることができませんので食事から必要量を摂取する必要があります。自分でビタミンCを作ることができるヤギは、ヒトの体重に換算して毎日13gのビタミンCを作っていますが、病気のときには毎日100gものビタミンCを作ります。
抗酸化・抗炎症作用
ストレスに対抗する副腎に大量に必要とされるビタミンCですが、抗酸化、抗炎症に対しても重要な役割を担っています。生体が呼吸をして生きているだけで活性酸素が発生します。活性酸素は細胞伝達物質や免疫機能として働く一方、過剰になると細胞を傷害し、がん、心血管疾患、生活習慣病、老化を促進します。美容的にはしみやタルミなどの肌トラブルに関与します。
ビタミンCは植物に由来するファイトケミカルのなかでもあらゆる種類の活性酸素を効率よく消去する抗酸化作用を備えることで知られています。その作用を期待してビタミンCの摂取を心掛けておられる方はたくさんいらっしゃいますが、動物性食品を食べることに落し穴があることは意外と知られていません。タンパク質は身体の重要な構成要素ですが、タンパク質を動物性食品から摂るとそれだけで身体に炎症を引き起こし、植物から摂れば炎症を起こす物質の排出を促す食物繊維や炎症を軽減するビタミン・ミネラル・ファイトケミカルを一緒に摂取できます。誤解されがちですが、PBWF※1の食事からでも十分なタンパク質を摂取することができます。
必須脂肪酸
抗炎症作用が知られるもう一つの栄養素がオメガ3脂肪酸です。オメガ6脂肪酸と共に体の中で作ることができない必須脂肪酸で、どちらも体を正常に機能させる役割を持ちますが、オメガ6脂肪酸は体に炎症をおこす物質に変換されます。オメガ6と3は量よりバランス(比率)よく摂取することが大切なのですが現代人の食生活ではオメガ6脂肪酸過多になりがちです。
必須脂肪酸のバランスの話を知っている方は多いのですが、「油」をどう摂るべきか知っている方は非常に少ないように思います。「オリーブオイルは身体に良いので選んで使っています」「アマニ油やえごま油は健康に良いでしょう」とよく伺いますが、実はすべて間違いです。なにかの植物を絞って抽出した油はホールフードである植物の栄養バランスを崩しています。畑の肥料につかう「油かす」は栄養の塊であり、抽出油のほうが栄養をなくした「カス」なのです。オリーブオイルではなくオリーブの実を、米油ではなく玄米を食べるというように植物をなるべく精製加工することなくホールフード(PBWF)で食べれば脂肪酸のバランスなど難しいことを考えなくても自然に良いバランスで脂質を摂取することがきます。
オメガ3脂肪酸をサプリメントで摂取しようとする方にお伝えしたいのは、サプリメントの材料に気を配るということです。多くのオメガ3サプリメントは魚油を原料にしていますが、EPA・DHAサプリメントの原料となる魚は水銀やPCB※2、放射性物質などで汚染されており、毒物は油に溶け込んでいることが多く、安全な食品とは言い切れません。実はEPA・DHAは藻が作っていて、魚は藻を食べているにすぎません。サプリメントは植物である藻を原料とするものを選ぶことが大切です。当院では水槽内で汚染なく栽培された藻を原料にした植物性EPA・DHAサプリメントを作っています。
※1:プラントベースホールフード。植物性の食材をなるべく精製加工することなく食べる食事法
※2:ポリ塩化ビフェニル化合物の総称。毒性が極めて強くダイオキシン類として呼称されるものの一つ