「可能性」の問題
複数の子宮筋腫がある、43歳の妊婦さんから聞いた本当の話。
高齢出産……いえ、出産にはつきものの話題を意を決して取り上げます。ご意見おありの方はmacro-health.org/contactからご連絡くださいね。
とあるご夫婦が、40歳を超え、待望の第一子を授かりました。そして、かわいいけれど試行錯誤の誕生まもない時期に、離婚を選択する見通しです。
その第一子ちゃんは、出生後ダウン症の可能性を告知され、検査で確定診断を受けました。告知されて以降いろいろ調べたのでしょう、お母さんのほうは、ダウン症は歴史が深いだけあって支援システムがしっかりしている、ああよかった、とすっかり前を向いています。が、お父さんのほうは、なかなか受け入れられないようです。落ち込んで、身動き取れない父親に見切りをつけた母が、母子家庭で子どもを育てようとしています。
不妊治療のすえ授かった第一子に産後、染色体異常がみつかったとき、妊娠初期のエコー検査で医師に後頭部の浮腫傾向等、染色体異常の可能性を「見逃された」母親が、「あの時点で見つけてもらえたら、やり直したのに」と発言したのを聞いたこともあります。不妊治療も繰り返すとだんだんデザイン的思考が生まれてくるというのは、よく言われることです。その方はその発言の時期をさっさと乗り越え、今は楽しく子育てされています。
いつまでも天使のようなダウンちゃんはとても可愛い、というのも、特に保育のプロの方からよく聞く話です。
一方、きょうだいがダウン症なので子どもを産まない、という選択をしている女性もいらっしゃいました。そういう方には出生前診断が役に立つね、なんて、気軽に言うことはできません。今は以前よりも精度の高い、そこまで侵襲的ではない血液検査から始めることもできます。そこで疑いが生じた場合、より確定的な羊水検査まで進むかどうかは親の選択で、実際、出生前検査には常に選択が伴います。仮に染色体異常の「可能性」を診断された場合、あなたたちはどうするの?
親になる前の不安
私自身を振り返ると、一度も親になったことのない、初めての妊娠の時が一番不安になりました。当時、仕事の関係者で、唯一子どものいた人にその不安について聞いてみると、最初の子の時は気になったけど、二番目の時は全然気にならなかった、との回答で、当時はピンときませんでした。が、いざ子どもを持ってみるとよくわかりました。一度親になってしまうと、多くの人は、その子のいない人生が考えられなくなります。それを実感すると、仮に下の子に何かの兆候が見つかったからといってどうにかしようとは思えなかった。私には、出生前検査という選択肢はなくなりました。44歳の3人目の時にも迷わずそうだったので、連れ合いはちょっとえっ!と思ったようですが、とはいえ何か見つかったらどうにかしようとまでは彼も思っていなかったので、多少検索して知識を増やすのにとどめたようです。事前に知っておいたほうが産後の準備ができるという利点もあるそうです。
自分の経験だけで考えると、どの子も私に必要なことを教えてくれ、今生のご縁なのだと素直に思います。そこには自分一人では乗り越えられない隠しテーマ、幸せの種が隠れていたりもします。それを敷衍することが許されるなら、みんながすみやかに幸せの種を見つけ、綺麗な花が咲きますように、と願ってやみません。
望月 索(もちづき さく)人一倍不摂生な出版仕事人が37 歳、40 歳、44 歳で出産、育児の経験も積み、健やかな暮らしについて学び合う協会の設立メンバーに。
編集、ライター、一般社団法人日本マクロヘルス協会理事。編著に『子どもを守る自然な手当て』、訳書に『親子で楽しむ!
おむつなし育児』、『小児科医が教える 親子にやさしい自然育児』。
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