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法の舞台/舞台の法

日常のなかにある法律問題踊る弁護士の活動報告

弁護士/舞踏家

和田 浩 (わだ ひろし)

1977 年新潟県柏崎市生まれ。京都大学総合人間学部卒業。弁護士として、さまざまな分野の事件に取り組んでいる。なかでも、障害者の権利に関する案件に多く携わっている。他方、舞踏家として舞台活動もおこなっている。福祉、芸術、司法の連携について、あれこれ考えている。
縁(えにし)法律事務所 
京都市中京区新椹木町通二条上る角倉町215
075-746-5482

いじめ防止授業

投稿日:

前回は、学校から弁護士に対するいじめ防止授業の依頼が多いことや、いじめ防止対策推進法における「いじめ」の定義についてご紹介しました。これを踏まえて、今回は、いじめ防止授業の具体例についてご紹介したいと思います。

憲法と人権

まず、いじめは、被害を受けた人の尊厳や人権を傷つける行為であることを説明する必要がありますが、そもそも生徒や児童が、人の尊厳や人権といった概念を理解しているとは限りません。高校生くらいであれば、憲法や人権についての一定の知識や理解力を有するかもしれませんが、小学生の場合、高学年であっても、そうした概念について十分な知識を有しているわけではありません。そのため、必要に応じて基礎的な話から始めなければなりません。

たとえば、小学生高学年に対して、試しに憲法について質問をしてみると、「国民主権」「戦争放棄」「基本的人権の尊重」といった原則について、言葉としては知っているものの、基本的人権の具体例について、なかなかイメージできない児童が少なくないことがわかります。むしろ、基本的人権よりも、「国民の義務」のほうが記憶に残りやすいようです。そこで、弁護士としては、基本的人権の内容や、その重要性について、説明する必要があります。

また、一般にいじめ防止のための授業には、さまざまな方法があると思いますが、弁護士がいじめ防止授業をする以上、やはり具体的な法律の話をすべきという考えが主流なのだろうと思います。そうすると、憲法のような理念的な話のほかに、いじめをした場合の民事責任や刑事責任について、授業で取り上げることが考えられます。もっとも、そうした民事責任や刑事責任を教えることが、本当にいじめ防止に役立つかどうか、疑問を呈する意見もあります。

他方で、先月ご紹介したように、法律上のいじめの定義、すなわち、一回だけの行為であっても、また1人対1人の場合であっても、いじめに該当し得ることを教えることには、意味があると思います。そうすることで、現にいじめの被害にあっている方が、「自分の受けているのがいじめにほかならない」と、気づく可能性があるかもしれないからです。

いじめの四層構造

弁護士によるいじめ防止授業においては、「いじめの四層構造」の話を取り上げることが少なくありません。これは、法律論ではなく、社会学的なモデルであり、いじめは、①いじめをする加害者 ②いじめを受ける被害者 ③いじめをはやし立てる観衆 ④見て見ぬふりをする傍観者 という四層構造を有するという考え方です。そして、④の傍観者が見て見ぬふりをやめ、行動を起こすことにより、いじめが抑止されたり、解消されたりする可能性が高まるとされます。

たしかに、傍観者といわれる立場の児童や生徒の言動が、いじめの抑止や解消にとって重要であることは間違いないでしょう。しかし、私は、④の傍観者のなかには、いじめを目の当たりにしたとき、見て見ぬふりをしているのではなく、自分が被害者であるかのように心を傷つけられている人もいると考えます。ゆえに、傍観者に位置付けられた児童や生徒に対して、安易にいじめの抑止や解消のための行動をとるよう求めるべきではないと思います。そして、傍観者とされた児童たちの心を想像したうえで、そうした児童たちでもとれるような小さな行動を探し、伝えることが、いじめ防止授業の課題だろうと思っています。

こんな具合に、弁護士によるいじめ防止授業といっても、確定的な内容や方法があるわけではありません。弁護士も、常に学びながら、よりよい授業を目指しています。悩みながらも、真剣にいじめ授業に取り組む弁護士の想いが、なんらかのかたちで児童や生徒に届くといいな、と思っています。

- 法の舞台/舞台の法 - 2021年4月発刊 vol.163

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