厳しく、妥協がなく、しかし優しさに満ちた市川式お手当て。
生きる決意をした人々を全身全霊で支える市川加代子先生のあふれ出る愛の源を全七回連載でご紹介します。
シリーズ2
-毎日の食事が人生を、そして世界を変える-
【第五回】まずは要らないものを捨てることから
最も印象に残っているのは、全身包帯姿の重度のアトピーの女性だ。首を横に向けることもできないほどだったが、約一年間、海草やニンニクのお風呂に入り、手足の温浴をし、食事を変えると、性格までも変わってきた。ある日、彼女は今まで一度も父親に「おはよう」をいったことがなかったことに初めて気づいた。言いたいけれど言葉が出ないこと数日、「今日は絶対に言うぞ!」と気合を入れて「おはよう」といえた瞬間、世の中がパッと明るくなったという。体が病んでいると心も病んでしまう。「初めて両親に感謝できた」と彼女は笑った。
ミイラのように包帯をグルグル巻きにした三歳の子は、お腹もポコッと出ていて栄養失調の状態。母親はその子が生まれて一度もぐっすり眠ったことがないという。父親はいつもイライラして暴力的で、「玄米食なんかで治るか!」と、ジュースやアイスを買ってくる。お宅に伺ったとき、上の子が冷凍室からアイスクリームを出して食べようとするのを見て、「治ったらみんなで食べよう」と目の前でゴミ箱に捨てた。協力しあうことを家族と十分話し合い、要らない物を捨てて再スタートした。
小豆島での合宿の際、この母親の苦労を目の当たりにした。「この子を殺したいと思ったことがある」と以前いわれたことも、さも有りなんと思えた。シーツはあっという間に膿や剥がれた皮膚でドロドロに汚れてしまう。さらにこの子は布団を見ると怖がる。母親が布団をかぶせて殺そうとしたことを覚えているからだ。親も子も本当につらいんだということを見せつけられたが、捨てることから全てが始まるということを再確認した体験だった。
次回に続く・・・