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子どもと情緒

【Vol.38】アナログとデジタル

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 最近、テレビで盛んに伝えられている地デジ化のアナウンスにはうんざりする。テレビがアナログ方式からデジタル方式に変わるということに対して一般人はシステム交換時に生ずる無駄な出費を気にする程度で、この方式変換の裏に隠されている大きな問題にはほとんど気付いていないように思われる。実は、生活周辺でのデジタル化はテレビよりずっと前からあらゆる領域で進められ浸透している。パソコン、テレビゲーム、携帯電話、時計から計測器など、デジタル方式は今日の文明の利器にくまなく応用されてきた。その結果、これまでアナログ方式で作られてきた膨大な数量の物が私たちの目の届かないところで産業廃棄物として処分されたが、十分使用に耐えるものまで惜しげもなく廃棄されてきた膨大な無駄が今後の経済の発展に対する足枷になるのは間違いないであろう。

 それにも増して問題なのはヒトの情緒機能に対する障害だ。これは危惧どころか既に現実のものになりつつあり、しかも若者ばかりか四十代の中年層にまで広がっている。「モラトリアム・シンドローム」と「ゲームおたく」は期を一にするものと思うが、これにはデジタル化が深く関与していると私は考えている。私の大学の先輩で京都大学の教授までした人物が、「野村君、私の息子は40歳を過ぎたのに嫁も取らず、会社から帰ってくると部屋にこもってコンピューターゲームに没頭している。どうなっているのかさっぱり分からん。」と頭を抱えておられた。また別の例だが、私の友人が大学の研究室を訪ねてきて、息子を研究員として使ってやってくれないかとのこと。丁度、空きがあったので受け入れたが、これがとんでもない人格で、いわゆる高機能性障害児であることが後で判った。

 父親の話では、コンピューターには精通しているとの事であったが、それは、コンピューターゲームについてであって、後から聞いた話であるがエクセルもロータス123も使ったことが無かったとのこと。研究室に来てからいじくり回して使いこなしていたようであるが、私のようなアナログ人間は、マニュアルを丁寧に読んでからしか使えないのに、直ぐにコンピューターに入り込めるのである。異星人を見たような気がしたものだ。

 しかし、一見したところ上手に使いこなしているように見えるが、データの整理は第三者には全く理解できず、入力にも信頼性がないため往生したことがある。

 彼のもっぱらの興味は、複数の仲間とコンピューターゲームのキャラクターになって色々やり取りをすることにあったようだ。研究室の仕事が終わると、夜を徹してこのゲームに没頭していたようで、仕事の最中に眠りこけていることが多々あった。そんなこととは露知らず、ひょっとして無呼吸症候群ではないかと心配もしたが、原因が分かったときは怒りよりも唖然としたことを思い出す。それでも、教育者の端くれとして、人間らしく育てようとマレーシアで進めていた大きなプロジェクトにも研究補助員として参加させ、体を使うことを徹底的に教え込んだ。その甲斐あってかどうか分からないが、研究所を辞めてから届いた年賀状には農業に打ち込んでいるとの事。仕込んだ甲斐があったのかと少しは心が安らぐ思いであった。

 上述した二つの例でも分かるように、好むと好まざるに関わらず社会のデジタル化が進められていく中で、人間性の本質、存在に関わる諸現象が現れ始めているのである。今回副題とした「アナログとデジタル」というテーマは、問題が大き過ぎて与えられた紙数では収まりきらないようだ。後何回か同じテーマで書くことになると思うが、まず端的にお伝えしておきたいのは、主題である「情緒」はアナログやデジタルなど文明の産物からは生まれないし、育たないということである。敢えて断定的な言い方をしたが、情緒が核となって生まれる「思いやり」や「優しさ」「悲しみ」などの言葉で表現されるものは、直接物理量として表現するアナログ表示やこの表示を更に簡略化して数字の0と1の組み合わせの二進法で表されるデジタル表示では表しようがないと私は思っているからである。

 アナログ(analogue)という語の本来の意味は、日本語で「類似物」「相似物」、デジタル(digital)は「指の」「指上の」あるいは「計数型の」といった意味であるが、今日日常的に使われている用語としてのアナログ、デジタルは、前述したように前者が重量や振動数などの物理量を直接表す方式、後者は振動数など複雑なゆらぎを持つものを計数表示によって数値や符号で表現する方式で、信号の大きさや振動波形に多少の狂いがあっても同じ意味内容を持つものにまとめられるため、内容の伝達を均一化できるという利点はある。しかし、実はこれが厄介な問題を含んでいるのである。次回は、このあたりも含めて話を進めようと思っている。 

野村隆哉

野村隆哉(のむらたかや)氏
元京都大学木質科学研究所教官。退官後も木材の研究を続け、現在は(株)野村隆哉研究所所長。燻煙熱処理技術による木質系素材の寸法安定化を研究。また、“子どもに親父の情緒を伝える”という理念のもと、「木」本来の性質を生かしたおもちゃ作りをし、「オータン」ブランドを立ち上げる。木工クラフト作家としても高い評価を受けている。
オータンの「木の動物たち」 >>

- 子どもと情緒 - 2010年10月発刊 Vol.38

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