お母さんの心の不足感
最近診療していて、つくづく子どもの健康と幸せのためには、お母さん(母なる存在)の心がちゃんと安定していることが必要だと感じます。不登校、摂食障害、体調不良、問題行動など、子どもが抱えるトラブルの多くに、お母さんの「心の不足感」が関係しているのです。
誤解を恐れず極論すれば、子どものトラブルは「お母さん気づいて! もっと楽になって! 幸せになって!」というサインです。
不登校も摂食障害も体調不良も問題行動も、問題だと思っている症状(現象)をなくしたり、治療して目の前の問題をなくすことがゴールだと思っていると、さらに悪化したり、また一時的によくなっても、すぐにぶり返す可能性があります。
それは、子どもが気づいてほしいと思っている原因があるのに、目の前の問題だけに注目してしまうと「もっと問題を大きくしないと、本当の原因にお母さんは気づいてくれないかもしれない」と、子どもが無意識に感じてしまうからです。
どんな問題も、まず現状を認めることが事態の打開に繋がります。現状を認めるということは「そのままの状態で大丈夫だよ」と子どもに言ってあげることです。「不登校でもいいよ」「ご飯食べたくなくてもいいよ」「体調が悪くてもいいよ」「問題があってもいいよ」。
どれもザワザワする言葉ですね。どの言葉によって強く抵抗を感じるか、人によって違います。強い抵抗を感じるところに、その人の固定観念、マイルール、心の葛藤が隠れています。
子どもを苦しめる固定観念
固定観念の例としては「学校に行かないなんてありえない」「勉強(宿題)は絶対に必要」「皆から遅れてはいけない」「学歴は高いほどいい」「ご飯は3食きちんと食べなければいけない」「好き嫌いしてはいけない」「ご飯を残してはいけない」「ご飯は、家族揃って食べなければいけない」「病気はきちんと治さないといけない」「病気の原因を調べないといけない」「元気よく振る舞わないといけない」「笑顔でないといけない」「人に迷惑をかけてはいけない」「他人から非難されてはいけない」「コロナが消えるまで自粛しないといけない」などが挙げられるでしょう。
すべての固定観念を外す必要はありません。でも、その固定観念のせいで子どもが苦しんでいるのであれば、手放してあげないと事態はこじれていきます。大人の「常識」という思い込みが、子どもを苦しめているのです。実はその常識(固定観念)で自分をも縛って苦しんでいることもありえます。
母を思う子どもの気持ち
子どもは自分のことを認めてほしいと思っていますが、それと同じくらい、親を(とくに母親を)幸せにしたいとも思っています。お母さんが苦しんでいると、自分のせいかもしれないと感じます。お母さんを幸せにするために、もっと頑張っていい子になろうとしたり、もっと我慢をしなければいけないと自分を責めます。場合によっては親の固定観念を壊すために、直接的に暴力や問題行動を起こして、親を変えようとすることもあります。問題が起きたとき、その瞬間は病気やトラブルに注目するのは仕方がありませんが、少し落ち着いたら、それらは子どもからの何かのメッセージではないかと自分の胸に問いかけてみましょう。
心が優しい子、感受性が豊かな子ほど、お母さんの心の痛みを敏感に感じ取ります。そういう傾向があるお子さんであれば、お母さんが思っている以上にお母さんのことを気遣い、自分のことは我慢しているのかもしれない、と想像してあげましょう(続く)。