やりたいことを楽しむエネルギーは、生きる力であり治癒力です。一方、心のエネルギーを強烈に奪い、治癒力を奪う思考パターンが5つあります。というお話の続きです。前回、我慢、自己否定、比較の3つについて書いたので、今回は残り2つ、罪悪感と後悔についてお伝えします。
「罪悪感」は一般的に責任感や正義感の強い人が持ちやすいと云われています。善悪の判断基準が厳格で、自分を厳しくジャッジする傾向にあります。人を傷つけた、迷惑をかけたなど、人に害を与えたという思い。役に立てなかった、なにもできなかったという無力感。これらが罪悪感に繋がります。なかでも母親との関わりで、お母さんを幸せにできなかった、笑顔にできなかったことは強い罪悪感を作ります。子どもは母親を幸せにするために生まれてくるという説もあります。それが果たせなかったことは、子どもには大きな心の傷として残り、生まれてきた意味そのものを否定されたように感じる可能性もあります。
罪悪感を手放すには、まず善悪の判断をゆるめる必要があります。患者さんにお勧めしているのは、今、日常的にがんばっていることで、一番イヤなことをやめること。やめるのが無理であれば、少しでも減らす工夫をしてくださいと伝えています。頭では正しいと思っていて、心が本当は嫌がっていることを、心に従ってやめてみる、ということを実践してほしいのです。やめてみるとわかりますが、心がホッと落ち着き「めっちゃ楽だ」と感じます。でも、すぐにまた罪悪感が襲ってきます。罪悪感を感じないためにがんばっていたことをやめたのですから、罪悪感を感じるのは当たり前です。不安感、恐怖心、怒り、ザワザワ、無力感など、感じたくないと思っていた感情や、やっぱりやめなければよかった、だまされた、といった思考が湧いてきます。湧いてきた感情や思考を「そうだよね、そう思うよね、わかるよ」という言葉を繰り返して、すべての感情を受容してあげてください。徹底して自分の感情・思考を受容しましょう。
気持ちが落ち着いてきたら「お母さんの幸せは、私の責任ではない」ことを確認しましょう。自分の幸せは自分で感じるしかありません。どんなに幸せの条件が揃っていても、受け取るか受け取らないかは本人次第です。逆にどんなにつらい状況でも、幸せを感じることは可能です。「私にはどうすることもできなかったし、なにもしなくても良かった」と悟りましょう。この罪悪感は、もう私には必要ないと確認して手放しましょう。
後悔から得られるものもある
「後悔」は過去の行動について、失敗した、別のやり方をすればよかったなどと悔やむ気持ちに、囚われている状態です。グルグルと考え続けて疲弊したりします。手放すには、過去の行動について、ネガティブなことだけではないと捉え直す必要があります。
過去の行動についていつまでも悔やむことは、心が傷ついたままの状態であると云えます。そうして傷ついたことのある人は、自分が言われたら嫌な言葉を使わないよう気をつけるようになります。あの人も心に傷があるかもしれないと想像できるようになります。同じような傷を持った人に寄り添ったり、相談に乗ったりできるようになります。後悔したことで学べたこと、気づけたことなど、ポジティブな側面に意識を向けましょう。つらい過去があったからこそ、人に優しくなれることに気づいてください。この優しさのおかげで自分の周りに良い人が増え、嫌な人が減っていきます。この優しさの価値は無限大です。お金でも買えない、学校でも教えてくれない、自分だけの大切な宝物です。あの失敗のおかげで大切な宝物が手に入ったのだと繰り返しイメージしていると、辛い記憶が少しずつ癒やされていきます。