サトウキビの収穫には、鎌を使って1本1本倒していく「手刈り収穫」と、10トン前後もある大型機械を使った「機械収穫」があります。私が移住したころの宮古島では、「手刈り:機械」の割合が7:3だったのが、この5年間で一気に機械化が進み、今は1:9の割合です。農業従事者の平均年齢が65歳を上回る一方、農業従事者数は減少するなか、機械化の流れは必然です。作業負担を軽減し、生産性を高めることはもちろん歓迎すべきことですが、その延長線上にどんな未来を描くのか、併せて考える必要があると思っています。
国際価格(5千円/トンの異常安価)を目指して過当競争に参入するシナリオは、私には消極的な選択に見えます。担い手農家※と農地を集約して一人当たりの生産規模を拡大し、機械化を推進することで、確かに生産効率は高まります。しかしその結果、次のことが想像されます。(1)経営改善は限定的で依然として価格競争力を持たない。(2)サトウキビ栽培に携わる農業従事者は現在の1/10以下程度の担い手農家に一極集中するために副収入を失くす農業従事者が発生する。(3)モノカルチャーの推進により他の産業が育ちにくい環境を作る。
適地適作のサトウキビ栽培が攻めに転じて、より積極的な選択になるよう、沖縄・宮古島のサトウキビにしかできない、新たな価値・誇りを創出できないだろうか? たとえばサトウキビの表面に分泌されるワックスには、医療用途や化粧品用途の原料として多様に活用できるさまざまな有効成分が見つかっています。品種改良・病害虫対策など生産性向上のための研究と並んで、高付加価値製品を生み出すためのサトウキビの基礎研究にも産官学の力が注がれることを願っています。