沖縄の揚げ菓子の「サーターアンダギー」は、沖縄土産としてご存じの方も多いのではないでしょうか。いまではホットケーキミックスのように、粉を水で溶いて揚げるだけの家庭でも手軽に作ることができる商品も販売され、身近な沖縄のお菓子になってきています。
サーターアンダギーは、那覇の方言で「砂糖の揚げ物」という意味です。宮古方言では、砂糖を「さた」、揚げ物を「ぱんぴん」と呼び、「さたぱんぴん」と呼んだり、単に天ぷらと呼んだりしています。「揚げ物」と呼ぶのは納得できても、「砂糖」というより小麦粉じゃない?と思われるかもしれません。それは砂糖がとても貴重だったから。サーターアンダギーは口を開けて笑っているように見えることから、昔は結婚式などのお祝いのときに食べられる縁起の良いお菓子でした。
宮古島のプライベートガイドでご紹介する山口淳子さん。彼女が作るサーターアンダギーは一味も二味も違います。淳子さんはハレの日にお母様が作る天ぷらの味を、楽しく華やかなイメージとともに記憶し引き継いでいます。淳子さんが使う鍋にも、ともに歩んできた歴史が詰まっています。戦後品薄だった当時、米軍から市場に出回った鍋を、ドル建てで手に入れます。良いものであることは差し引いても、大切に手入れして使っているからこそ、美しいままで、話を聞かなければ年季の入った鍋だとはわからないくらいです。
淳子さんは多良間島産のかち割り純黒糖と小麦粉を混ぜて生地を作り、油で揚げていきます。テンポ良く無駄のない自然な動きは、まるで熟練の寿司職人のようで、揚がってくる天ぷらの大きさや形、割れの入り方がすべて整っていて美しい。私もやってみますが、見るのとやるのでは大違いで、生地が手にまとわりついてうまく外れない。生地と格闘した末に、サイズも形もちぐはぐな天ぷらが鍋に浮かびます。淳子さんはそれでも油の温度と揚げ時間を調整して美味しく仕上げ、「むしろ味があって良い」と褒めたりして、一緒の時間を存分に楽しませてくれます。淳子さんと作る天ぷらは、歴史の深みとやさしさに包まれた格別の美味しさです。
できたてアツアツのさた天ぷらに大満足! 淳子さんとの楽しく、美味しく、深~い時間を満喫