先月号のコラムでは、かつて女性の婚姻開始年齢が16歳である一方で、男性のそれは18歳であったことや、今年4月1日に施行された改正民法により、男女の婚姻開始年齢がいずれも18歳と定められたことをご紹介しました。そして、「16と18のあいだ」、すなわち、16歳と18歳という僅か2歳の差異のうちに、性差別的な眼差しが存在していたに違いないことを指摘しました。
ところで、この婚姻開始年齢の改正は、もうひとつの重要な改正とともになされました。それは、「18と20のあいだ」に関わる改正です。
民法4条
この改正については、すでに多くの方がご存じだと思いますが、改めてご紹介すると、これまで20歳と定められていた成年年齢が、18歳に引き下げられたのです。
このことが定められているのは、民法4条です。具体的には、これまで、「年齢二十歳をもって、成年とする」と定められていた民法4条が、「年齢十八歳をもって、成年とする」と改正されました。
他方、民法4条の改正に先立ち、平成27年に公職選挙法が改正され、公職選挙法上の選挙権などの参政権を有する者の年齢が、20歳から18歳に引き下げられました。
民法の成年年齢と参政権に関する年齢とを一致させる論理必然性はないと考えられていますが、国政上18歳以上の者を一人前の大人と考える以上、法制度としての一貫性や簡明性の観点からすると、市民生活上の基本的な法律である民法においても18歳以上の者を一人前の大人として扱うことが適当であるなどの指摘があり、今回の改正に至りました。
成年年齢の意義①
ところで、成年年齢には、民法上、どのような意義があるのでしょうか。
まず、一つ目の意義ですが、成年年齢には、契約などの法律行為を単独ですることができる年齢という意味があります。具体的には、未成年者は、原則として単独で契約などの法律行為をすることができないと定められています(民法5条1項)。そして、親権者などの同意を得ずになされた未成年者の法律行為は、事後的に取り消すことができることになっています(同5条2項)。逆にいえば、成年年齢に達した者は、単独で有効な法律行為をすることができるわけです。
そうすると、成年年齢が引き下げられたことにより、今後は18歳以上の者は、単独で有効な法律行為をすることができるようになります。このことは、18歳、19歳の者にとって、自ら主体的に契約などの当事者になれるというメリットもありますが、他方で、事後的な取り消しができなくなることから、18歳や19歳の者が消費者被害の対象となる恐れがあると強く懸念されています。
成年年齢の意義②
成年年齢のもう一つの意義は、親権者の親権に服さなくなる年齢という意義です。親権とは、未成年の子の父母に与えられた権利義務の総称であり、具体的には、未成年の子に対する職業の許可(同823条)、財産の管理(同824条)などが含まれます。成年年齢は、親権に服する者の範囲を画するという意義を有しています。
今回、成年年齢が引き下げられたことにより、18歳以上の者が親権の対象から除外され、独立した主体となりますが、他方で、自立に困難を抱える18歳、19歳の者が、親の保護を受けにくくなり、ますます困窮する恐れがあるなどと指摘されています。
以上のような指摘を踏まえ、18歳、19歳の若年者が安心かつ安全な市民生活を送れるように、さまざまな施策を進める必要があるでしょう。