がんや生活習慣病など命に関わる重篤な病気を(食)生活で克服することが可能であることを続けてお話ししてきました。しかし、命に関わらなくても慢性湿疹やニキビ、アレルギー性皮膚炎、頭痛、慢性的な下痢や便秘、生理不順や月経困難、不妊、疲れやすい、ぐっすり眠れない、スッキリ起きられない、不安やイライラなど、不定愁訴と呼ばれるものは、大変な病気として扱われなくても当事者にとっては深刻であり、QOL(生活の質)や日々のパフォーマンスに影響します。「病院に行くほどでもないから」「どの診療科に行けばよいかわからない」「市販薬や栄養ドリンクで対応している」など症状の原因がなにによるものかを突き詰めて考えたことがない方が多くいらっしゃると思います。医療機関を受診したとしても「病気ではない」「原因がわからない」などといわれて釈然としないながらも放置せざるを得ないという方もいらっしゃると思います。
栄養外来
11年前の3・11の震災に伴う原発事故をきっかけに私と一人娘、そしてスタッフが口にする食物の安全性に疑問を持つようになり、常識と思っていた食について学び直しました。その過程で、栄養で病気を予防し治療することを実践されている先生方が多くいらっしゃることを知り、勉強させていただきました。私は開業医ですから、学んだことを患者様にお伝えする環境は整っています。薬に頼らず病気を栄養で治療する術をお伝えする栄養外来を開設する決断はすぐにできました。
当院の栄養外来では、専門のカウンセラーが入念な問診と分子栄養学的な視点に基づく血液検査と、必要に応じて尿・毛髪などの情報、IgG遅延型アレルギーや体内のミネラルの過不足を調べる検査などをおこない、不調の原因を探り、改善の方法を提案しています。
不調の改善には栄養状態の把握が特に重要ですが、食事は十分に取れているのに栄養が不足しているとしたら、消化吸収する力が足りていないのかもしれませんし、栄養を活用するように細胞が機能していないのかもしれません。または吸収を邪魔する栄養素や有害物資を体内に入れているのかもしれません。有害物質をゼロにすることは難しいですが、それらを排出する能力が高い人とそうでない人がいるのです。
対症療法でなく根治を目指す
私は毎食200gくらいサラダを食べています。しかし、そんなにたくさんの生野菜は食べられない、または3食プラントベースホールフードにす
不調や病気の症状のみに注目し、薬で抑えるだけの治療は不十分かつ、場合によっては不適切です。不調の本当の原因を探し出し、根本的に改善することができれば、症状を抑えるだけの対症療法とはまったく違うものとなります。分子栄養学と聞くと「サプリメントをたくさん処方される」という認識をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、当院ではまず、(食)生活を整える指導をおこない、サプリメントを使用する場合は、必要な種類を必要な期間だけ様子を見ながら使用する指導をおこないます。
私のクリニックではあざの治療を専門的におこなっています。お子さんのあざ治療は早期に開始するメリットが大きいので小児あざ外来の枠を特別に設けていて、毎週多くの赤ちゃんを診察します。ひどい湿疹で真っ赤な皮膚をしている患児さんに出会ったときなど、赤ちゃんとお母さんの栄養状態を伺って母子ともに牛乳を止めていただく提案をしただけで次に受診されたときにはきれいな皮膚になっておられることも珍しくありません。湿疹の原因が住宅に使用される建材の化学物質であったこともあります。出産を機に新しい家に引っ越しをされていたのですが、ご実家に戻っていただいただけで改善した例もあります。症状の原因を探り取り除くことは根治につながりますので、患者様のお話をよくよく伺うことを大切にしています。