前号では蟹漁師の吉浜崇浩さんの入江の環境保全活動を紹介しました。今号では「命のゆりかご」といわれる入江についてご紹介します。
入江は6時間ごとに潮の干満が起こります。エビや蟹、小さな魚にとって流れの穏やかな浅瀬は、プランクトンが豊富で快適な環境です。そこには多様な生物が生息しています。
干潮時には、プランクトンが近海に流れ出し、サンゴ礁を育てます。また珊瑚は小さな魚にとって、貴重な餌場や隠れ場所にもなっています。満潮時には、大型魚が外洋から入江に入ってきて産卵をします。稚魚は大型魚に捕食されるリスクも少なく、潮の流れが穏やかな環境で育ち、成魚になって外洋デビューを果たします。また、入江には砂のなかや気根の周りなど、外敵から身を隠す場所が豊富であることも生物の多様性を育んでいます。時間によって活動する動物の種類も異なるので、行くごとに新しい発見があります。
入江には独自の進化を遂げたマングローブと呼ばれる植物群が生育しています。それらは海水が混ざった水を吸い上げ、満潮時には根が海水に水没するなど、一般的な陸生植物とは異なる環境で育ちます。その特徴の一部をご紹介します。
『ヤエヤマヒルギ』は、幹や枝から支柱根を伸ばし、杖をつくような型形で自分の体を支ます。
『オヒルギ』、『ヒルギダマシ』は、水没する環境で根の酸素不足を解消するために、呼吸根を地面に出します。それはまるで「三角座りした膝」や「筍の株」のように、地上にポコポコと生えている状態です。
これらの植物は、根から吸い上げた海水の塩分を一旦葉っぱに溜め込みます。そして、落葉を通して塩分を放出します。落葉した黄色い葉っぱをかじってみると、確かにほのかにしょっぱいです。
そして、これらヒルギ科の植物の種は、コルク質で水に浮いて漂流します。漂着した場所で環境がよければ発芽します。まるで海を渡って海外に遠征するような性質で繁殖能力が高いです。
生命のゆりかごとして大切な役割を果たす入江