先日畑を訪ねて下さったお客様(本業はお医者様!)が、『本来、農家さんこそお医者さんであると思う』ということを言われ、想像もしなかった言葉にビックリしましたが、その後、仰った言葉の意味をよく考えてみました。
私たちの身体を 作ってくれている食べ物
病気になってからお医者さんの門を叩くのではなく、「自分の身体は自分が一番良く知っている」、「主治医は自分自身である」という積極的な意識で、病気になる前に自己の生活を見直し常日頃から自己の健康管理をする、という考え方は、東洋医学の「未病(管理)」という言葉に表現されています。
また、体に良い食事を摂って常日頃の健康管理をしていれば特に薬など必要とせず、病気を治療するのも日常の食事をするのも共に生命を養い健康を保つものとして源は同じである、という考えは同じく東洋医学の教えで「医食同源」として広く知られています。
私たちの身体を作ってくれている食べ物について、「なにを食べるか?」なるべく意識的・主体的であり、身体の健康を維持したいですね。健全な「食」を提供する側の立場で、原点である「農」の大切な役割を改めて実感するきっかけを頂きました。
自然と共に生きる生活
私たちの農法は、野菜や果物が育つ自然な環境を整え/再現して、その中から自然の恵みを頂く/収穫を得ることを目指しています。一切の農薬を使わないことは勿論のこと、生物多様性を重視して究極的には害虫/益虫が良いバランスを取って共生する状態を目指しています。他方、土壌消毒剤・殺虫剤・除草剤などを使って、当座差し当たって/目に見えて不都合な害虫・雑草を殺すと、そこから始まる筈の/その周りに産み出される筈の自然のサイクルが阻害されたり/断ち切られたりします。そのような思いを持って作ってきている畑は少しずつ居心地の良い空間になってきているようで、訪問者の方々から「この畑は良い匂いがする」「気持ちがよい癒しの畑」などの言葉を頂くことが多く、とても嬉しいことです。私自身、畑に出て無心で動いている時間は、まさにファーム・ヒーリングの言葉がピタリです。現在、農業体験生を受入していますが、より多くの方に解放していきたいと思っています。また、宮古島に足を運べない方々にも、本らくなちゅらる通信やフェイスブックなどのツールを通して日々の様子をお伝えしていきたいと思っています。
家庭菜園の勧め
一方で、「農」が「業」になると(すなわち、自家消費用の家庭菜園から生業としての立場が加わると)、自然と共に生きる生活をベースに心身共に健全な状態を促す、とはいっていないのが現在の農業実態ではないかと思っています。農薬による健康被害は農村地区に出やすいようで、農薬散布された畑には子どもたちを畑に入れることすら憚られます。一方で、無農薬野菜の供給は需要に到底間に合いません。唐突に聞こえるかもしれませんが、プランターでも良いから各家庭で野菜栽培を始めてみることが、食に対する意識を変え、やがては市場を変える動きに繋がると思っています。冷蔵/輸送技術の発達や市場のグローバル化がもたらされる前、地産地消が当たり前でした。恐らく今より豊かな食生活が存在していたのでしょう。単なる昔懐古に積極的な価値は見出しませんが、健康で豊かな生活は魅力です。
「農」という仕事に気概と誇りを感じ、常に自然の豊かさを尊ぶ気持ちを抱き、謙虚な気持ちでこれからもサトウキビ・果樹・野菜たち~畑~自然に向き合っていきたいと思います。