夫の母が春に倒れ、入院をしていました。入院が長引くにつれて、母は「早く帰りたい」とこぼすようになりました。病室にこもりきりになっていることに、疲れ切っている様子でした。身体はほとんど動かず、ことばも明瞭ではなく、なんだかぼんやりとした記憶にもなっていました。状態が落ち着いてからは、ベッドの上でリハビリを始めましたが、足を動かすことも難しい日が続いていました。わたしは、母の回復を願いながらも“もう一人で暮らすことは無理かもしれない……”と、思うようになっていました。
ところが、病院の別棟にあるリハビリセンターに通うようになってから、母は一気に活力を取り戻したのです。もちろん、リハビリセンターで先生方に熱心に指導をしていただいているということもあるのでしょうが、ベッドから車いすに移り、病院からいったん外にでてリハビリセンターに行くという身体の動き、そして、センターで何人かの人とともに身体を動かすということで、何かスイッチが入ったようでした。「土日はお休みなので、また月曜日にしましょうね」と、先生にいわれると「でも、ここは開いてますのやろ。一人で来てやりますわ」と、驚きの発言(もちろん、一人ではできません)。
今は退院して老人保健施設に入所し、リハビリを続けています。ここでも、リハビリの先生がとても丁寧だと歓んでおり、楽しく日々身体を動かしているようです。まだ車いすの生活ですが、もう少しで第一歩が踏み出せそうです。“一人暮らしはもう無理かもしれない”と思っていたことが嘘のように、着実に動けるようになってきていますし、顔色もとてもよくなってきました。外に出たり、身体を動かしたり、楽しくおしゃべりをしたりというなんでもないことがきっかけになり、“動けるようになって、また家に戻ろう”という意志が強くなっているようです。
そういえば、母から「もう年だから~」ということばを聞いたことがありません。その代わりに「もう少しで第一歩がでそうやわ」ということば。ただいま伝え歩き真っ最中の次男坊。どちらが先に第一歩が踏み出せるかが、楽しみになってきました。