現代病とストレス
心の病を始めとする「現代病」といわれるものの多くにストレスが関与していることは、知られていることでしょう。できることなら苦痛や苦悩は抱えずに生きたいものですね。
とはいうものの「もっと本音で生きてみましょう」というと、「でも…」ときて、「食べていくためには仕方ない」。本来は「食べる」ことは、「生きる」ことの一部のはずが、食べていくために自分を犠牲にし、自分が病気になってしまうというのは、「食べる」と「生きる」の優先順位が逆さまだといえます。
鎖につながれた象
本当はどんなこともやってみないとわからないことなのに、やってみる前から「どうせ無理」と諦めてしまっていることはありませんか。
『鎖につながれた象』の話をご存知でしょうか。象は、まだ小さなときに杭と鎖でつながれています。何度も引っ張って外そうとしても抜けないほどにしっかりと固定された杭に、やがて学習して抜こうとはしなくなります。やがて大きく成長して自分の体に対しては小さく本気で引っ張れば抜けそうな杭であっても外せないと思い込んでしまいます。だから外そうとすることもありません。しつけの結果、思い込みを植え付けてしまうのです。
例えば、子どもの頃に「作家になりたい」というような夢を持っていたのに、親から「そんなの無理に決まってる」と言われた。そんな経験はないでしょうか。
アメリカの教育学者、ピーター・クラインは子どもの頃の想い出について語っています。母親から夢を尋ねられた彼は、「本を書く人になりたい」と母親に打ち明け、思い描くままを母親に語り始めました。母親は何も言わずにタイプライターを出してきて、彼の語るままを打っていくのです。そうして打ち出されたものを「最初の作品ね」と手渡したと言います。このときから作家としての人生をスタートするのですから、子どもの夢を後押しする大人としては素敵な話ですね。
もちろん、子どものときからこのように恵まれていれば良いのですが、実際にはごく稀でしょう。では、大人になってからでは無理なのか。きっとそんなことはないはずです。先ほどの象にしても、もし誰かがお尻を叩けば、きっと杭を引き抜いて自由になることを知るでしょうから。
沢雉(たくち)
中国の思想書、荘子のなかに「沢の雉(キジ)」という話があります。
そんな意味でしょうか。多少は辛いことがあったとしても、自分の人生なんだから自分の思うように生きよう、常識の枠にとらわれずに外に飛び出してみよう、ということですね。
3つの視点
間違った固定観念というのは、ただ「何ができない」というような個人的な思い込みだけではなく、「社会的常識」と言われていることのなかにもたくさんあるでしょう。
現代病の多くは、標準的治療といわれる対症療法が中心です。病の原因、根本の部分に触れられることはあまり多くはありません。その結果、再発を繰り返してしまうこともあるのです。一方で、ほかの治療法や民間療法を選択する場合では、自分自身に責任がつきまといますし、自分の根本と向き合い大変な労力を必要とすることもあります。単純に「手術がイヤ」といって逃げていられるほど、病気治しは甘くはありません。
どちらの治療法が良いとか悪いということではなく、自分の人生に自分で責任をもち、他人任せにするのではなく自分で決めていくことが必要なのです。そうした大きなことを決めるときに持っておきたいのが、3つの視点。
・根本:本当の原因を探る
・長期:目先でなく長期的に考える
・多様:外に目を向けていろんな選択肢
があることを知るこれらを総合して、最終的には自分で考えることが大切です。
本音と建前、思考として考えていることと行動すること、そうしたことのギャップやズレのない生き方。「食べる」ことと「生きる」ことが同じ方向にあれば、自分なりの幸せな生き方ができそうですね。
執筆 圭鍼灸院 院長 西下 圭一 病院勤務を経て、プロ・スポーツ選手からガンや難病まで幅広い患者層に、自然治癒力を引き出していく治療を特徴とする。 鍼灸師、マクロビオティック・カウンセラー、リーディング・ファシリテーター。 |