母になるメカニズム
出産をきっかけにうつになった母親が自殺、というようなニュースがつい最近もありました。
私自身、正規産に入ってからのエコー検査の誤差で、問題なかったけれども陣痛促進されてしまった3度目のお産のあと、産後うつっぽい症状を経験しています。
その前2回の自然なお産があったから、これはおかしいと自分で自分の異常に気づきましたけど、比較対象のない方が、より大変な状況に陥ってしまいかねないのは、身にしみて理解できます。
出産の時にどうであるかは、本当に大事です。
いまちょうど、 ヒトと動物の「感情」等にまつわる本を作っていて、その中にあるお産の事例をご紹介しますね(刊行後ブログで紹介する予定です。ご興味ある方は、8月下旬に macro-health.org をのぞいてみてください)。
チンパンジーとヒトの遺伝子は「てにをは」レベルでしか違わず、98パーセント以上同じである、とはよく知られています。
チンパンジーに限らず、そもそも動物と人間には、進化の過程で共通して受け継がれてきた脳があります。
だから、出産なんて生得的な行動における、「生物学的な成り行きで母親になるメカニズム」も共通していたりします(出産については二足歩行した人類ならではの進化もあるのですけど、それはいずれまた書きたいと思います)。
出産時には、愛情ホルモンといわれるオキシトシンが大量に分泌されることも、よく知られています。
動物の出産でもオキシトシンが分泌され、母と子の絆を作ります。
例えばヤギの出産で、オキシトシンによる母子の結びつきを形成するのに重要なのが、生まれた子の粘液を舐めとる行為なんですって。
産後、母親に粘液を舐めとってもらえない不幸な経緯のあった子ヤギを、母ヤギは自分の子として受け入れないそうです。
逆に、自分の生んだ子ヤギが残念ながら死産でも、別の母ヤギが生んだ乳飲み子に、自分の子ヤギの粘液を擦りつけられると、自分の子として受け入れるから、養子縁組可能なのだとか。
そう読むと、ヒトはやっぱり胎盤食べたほうがいいんじゃないの、と連想しますが、今は法的に許されないのでさておき。
ヒトでも、産後、乳児を通常より長く母親から離してしまうと、「母性愛」の生まれない割合は高くなるといわれています。
でも、ヤギほどわかりやすくはありません。
ヒトは、ホルモンの力だけで母親になるわけではなく、母性愛を学び育むこともできるからです。
そうでないと、ステップファミリーは生まれませんよね。
産まなくても本能的な
自分で産んで自死を選ぶまで追い詰められる母親もいれば、自分で産まなくても母になる女性もいます(男性もその他の性の方もいるかもしれません)。
いま私の周りにも、ステップファミリーの母親が何人かいて、うち一人の女性には出産経験がありません。
ご本人は出産可能年齢ですし出産の意思もあるようですが、今はひたすら、家族になって間もない小学生男子を育てています。
「すごいなぁ」と思ってしまうわけですが、ヒトには、出産による本能的な結びつきもあれば、時間が経つうちに生まれてくる“血液中に分泌されるホルモンカクテルも含めて本能的な”母性愛もあるのだそう。
本能的な反射で得たものにあぐらをかいている私は、彼女の「習得する」姿に学び、こうべを垂れています。