地球からの贈り物、究極の天然成分・粘土を使ったスキンケア用品や化粧品で、プレマのお客さまにファンも多い「ボディクレイ」。まだ「クレイ」という言葉が一般ではない時代に創業した同社が、今日の人気を得るようになったのは、ひとりの「粘土おじさん」の存在がありました。今年3月に急逝した初代社長を、現社長の望月文氏が回顧します。
左が現社長の望月文氏。粘土科学研究所を経て、ボディクレイに入社。2017年から現職。右はスタッフの田村有希さん。笑い声の絶えない職場からは、在りし日の手塚氏の明るい人柄も偲ばれる
今では「クレイパック」と聞いて、「粘土のパック」と、すぐ理解していただける時代になりました。しかし商品開発を始めた1995年当時は、粘土と聞けば「小学校の図工で使った粘土?」という人がほとんどで、初代社長の手塚昭雄は、逆風のなか、粘土を原料とする化粧品の製造・販売を開始しました。けれども当時の手塚は、粘土の認知度の低さを逆風と考えたり、嘆いてはいなかったようです。
実は粘土は1000の用途を持つといわれるほど、多種多用な効果があります。手塚は未知の分野を極められることに大きな喜びを感じ、知識を深めながら、粘土が存在する場所にはどこへでも足を運びました。ボルネオ島では、野生の動物のように林の中にある粘土の塊と戯れたといいます。手塚は日本全国を飛び回りながら、粘土の効用や面白さを、店頭やイベントで熱く語り続けました。
今や当社の商品を扱ってくださるお店は全国900軒以上に及び、粘土の効用も広まりました。みずからを「粘土おじさん」と称して、粘土の魅力を伝え続けた手塚の存在があったからこそ、ボディクレイのファンは増えたのだと考えます。
手塚が、なぜ粘土の魅力に取り憑かれたのか。それは彼の父が化学会社の鉱物研究者だったからです。手塚の父・熙(ヒロシ)氏は、天然の粘土鉱物・日本産のモンモリロナイトに着目し、1965年にスキンケアへの応用研究を開始、そののち粘土科学研究所を設立し、化粧品開発に本腰を入れます。
この粘土を化粧品に変えてしまうという発想が、当時、音楽活動に打ち込んでいた手塚昭雄の心を突き動かし、粘土化学研究所に参加することになりました。そしてオリジナルブランド「ボディクレイ」が誕生することになったのです。
モンモリロナイトは、噴火したマグマが細かな火山灰となって海底に堆積、そこへ長い時間をかけて、地殻変動の巨大な圧力が加わり、変化・熟成してできた地球由来の素材です。粘土というと水分を含んだ塊を発想する人がいますが、本来は細かな粒子からなる堆積物を指します。
この粘土が、なぜ美容効果をもたらすのか。まずモンモリロナイトは、1ミリの5000分の1というウイルス並みの大きさの結晶で、またマイナスに帯電しているため、プラスに帯電する汚れを吸着します。肌や髪を傷めることなく、繊細なタッチで毛穴の奥の汚れや、古い角質などを取り除くことができます。
また超微粒子の結晶には、その体積をめいっぱい広げて、他の物質をより多く含む力があります。天然保湿成分やハーブエキスをたっぷり含んだモンモリロナイトが、肌に溶けこむように浸透して、内側から肌を潤すのです。
さらには皮膜効果。水分を含んだモンモリロナイトには、フィルム状の非常に薄い皮膜を形成するはたらきがあります。皮膚呼吸を妨げることなく、本来肌の持つ保湿力を引き出し、外からの刺激や汚れから肌を守ります。
2003年、ボディクレイが株式会社として創業を開始します。私は粘土科学研究所を経て、ボディクレイに移りました。
そのころにはすでに「ねんどのソープ」「ねんどの入浴剤」「ねんどのハミガキ」が普及しつつあったので、手塚と手分けして、とにかく全国をめぐって、お客さんと接することに集中しました。粘土という美容への効用がわかりにくい素材であるからこそ、あえて広告は出さず、会って直接説明することを大切にしています。
不思議なもので、粘土のことを知るにつけ、もちろん美容効果を伝えつつ、そこは手塚と一緒で、粘土の本質も伝えたくなってきます。「そもそも粘土は地球の一部で、実は生活のさまざまな場面で使われているんだよ」と話したくなるんです。
手塚のセミナーでは、地球誕生の歴史まで遡って、粘土について説明するのですが、彼がどうしてそこまで熱く語ったのか、今の私には理解できます。粘土の1000の用途に興味を示す人が増えれば、きっとボディクレイのファンも増えるからです。いつしか私も、手塚同様に、お客さんの前で、粘土のそもそもについて、熱っぽく語る機会が増えました。
そんな手塚が、今年3月に亡くなりました。でもボディクレイの活動は、なにも変わりません。「粘土の製品が、どこの家庭にもある時代を作りたい」。新型コロナウイルスで、お客さんと対面するのは難しい現状ですが、オンラインなども駆使して、これからも粘土の可能性を発信していきたいと思います。