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カンボジア地雷除去支援

江角泰 (えずみ たい)

NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。

【Vol.31】できるだけ速く安心して生活できる大地を取り戻すために ~金属探知機の重要性~

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 今回は、テラ・ルネッサンスが支援しているラオスとカンボジアにおいての地雷・不発弾除去で使う金属探知機の話です。現在カンボジアで実施されている地雷除去方法には、大きく分けて?人の手作業、?大型の機械による撤去作業、?地雷探知犬による撤去作業があり、地雷原の状況に合わせて一番効率のいい方法が選択されます。?の人の手作業での撤去方法で、撤去作業員にとって必要不可欠なのが金属探知機。電気などないカンボジアやラオスの農村では、こうしたシンプルで持ち運びしやすいものが、最も効果的で威力を発揮します。

 しかし、金属探知機にも欠点がないわけではありません。撤去作業員は、もちろん危険と隣り合わせの作業をしいられ、作業は地道で決して速いとはいえません。撤去に使われるのは地雷探知機ではなく、あくまでも“金属探知機”であるため、地中に埋まっている全ての金属に反応するのです。カンボジアの場合、金属探知機の反応は、地雷を1とすると金属片99の割合だといわれます。金属探知機で反応があった時点では、それが地雷なのか、単なる金属片なのかは判断できないため、その反応が何によるものかを一つ一つ確かめる作業が必要になるのです。

 また、撤去作業員によればカンボジアの土壌は、金属を多く含むラテライトの土地があるため、以前主流として使われていたSchiebel社製の金属探知機では、土にまで反応してしまい、除去作業を困難にしていました。加えてカンボジアでは、長い内戦の影響で、地雷が埋設されてからすでに30年以上経過しているものも出てきました。通常の地雷原では、国連で定められている人道的地雷撤去の基準である地表から13
cmまでを確認しなければなりませんが、埋設された当時より地雷が深くなっているものもあるのです。Schiebel社製の金属探知機の場合、外装がプラスチック製で、非常に小さな金属しか含まれていない中国製の対人地雷、タイプ72Aが、深く埋まっていると探知できないという問題がありました。各地雷撤去団体は、より高性能なMinelab社製の金属探知機への入れ替えを進めていましたが、この金属探知機は性能がいい分、値段も1台2818米ドルと高く、簡単に買い替えることができません。そこで、テラ・ルネッサンスでも2007年に地雷撤去団体MAGカンボジアへ10台のMinelab-F3という金属探知機を提供しました。それまでは、タイプ72Aが深さ13
cmのところに埋まっていた場合、Schiebel社製のATMIDという金属探知機で1度確認した後に数センチ地表を削り、再度金属探知機を当てるという、途方もなく非効率な作業が行われていました。しかしMinelab-F3によって、除去スピードが上がるとともに、作業員がより安全に撤去できるようになりました。同時にラテライト土壌に起因する金属探知機の誤警報・誤作動もなくなりました。

 一方、ラオスの場合は、地雷は特定の場所にあるものの、撤去が必要なのはほとんどがベトナム戦争中のアメリカによる200万トンといわれる空爆の不発弾です。特にクラスター爆弾の子爆弾は、30%以上が不発弾として残っているといわれ、爆撃機から落とされた爆弾が高速回転し、柔らかい田んぼへ落ちた時などは、爆発せずに、深くまで潜りこんでしまっているものもあります。地雷は地表近くに埋められていることが多いのですが、不発弾は数メートルの深さを確認しなければならないのです。そのため、使う金属探知機の性能もさらにいいものになります。現在提携する不発弾撤去団体MAGラオでは、撤去作業員に2名に1台しか金属探知機がないために、非常に効率の悪い状況が続いています。しかしこの金属探知機の値段は、約6000ドル。イタリアのCEIA社製のMIL-D1/DSというタイプで、地中深部まで探知できますが、値段はMinelabの2倍もします。

 昔からもち米の産地と知られるラオス・シエンクアン県の田んぼでは、多くのクラスター爆弾の子爆弾が残ったまま、30年間も稲作が行われていたところもあります。ただ運良くトラクターなどの大型農機具が使われず、牛耕が行われていたため、20~30
cmのところに埋まっていた不発弾に触れずに済んだとの話を、不発弾撤去団体から聞きました。すべての不発弾をラオスから取り除くには、百年かかっても難しいといわれています。地雷と違い、機械など使えない不発弾撤去では、金属探知機による手作業の探知と撤去しか、今のところ効果的な方法がないのです。撤去スピードを上げるためには、金属探知機がどうしても必要なのです。

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江角泰(えずみ たい)

江角泰(えずみ たい)氏
NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。
大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。
現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。

- カンボジア地雷除去支援 - 2010年3月発刊 Vol.31

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