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生産者さん紹介

プレマの商品を作ってくださっている生産者さんたちを紹介。 その魅力に迫ります

麻の伝統とモノづくり
野州麻紙工房 野州麻炭製炭所 代表 大森 芳紀氏

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日本伝統の素材、「麻」。神事には欠かせない存在であり、今も国産の麻の栽培を続けている地域があります。それが栃木県の野州地区です。ここで麻栽培を続けて8代目になるのが、野州麻紙工房・野州麻炭製炭所 代表の大森芳紀さん。昔からモノづくりが好きだったという大森さんは、麻の栽培だけでなく、麻紙や麻炭、それらを使ったモノづくりを積極的におこなっています。そんな大森さんの麻栽培の原点から今に至るまでを伺いました。

野州麻紙工房製炭所 代表の大森さん(写真左)と弊社代表の中川(写真右)。後ろにある建物では麻炭や麻紙を使った製品やその使い方を見ることができる

足尾山山麓の南側に広がる野州地区では、約360年前から麻が栽培されていたといわれます。僕の家では代々麻の栽培をしていて、わかっている限りでは僕が8代目です。ただ実は、最初は継ごうと思っていませんでした。昔から僕はモノづくりに興味があって、そちらの道に進みたいと考えていたんです。このあたりは縄文時代の遺跡が多くあって、よく土器の欠片が出てきます。子どものころはそれを夢中になって拾っていましたね。畑に入ってしまって近所のおじちゃんに怒られたりもしましたが(笑)。思い返すと、このころからモノづくりに興味をもち始めたんだと思います。小学生のころ、近所の陶芸教室の扉がたまたま空いていて、そこからおじいちゃんおばあちゃんたちと一緒に陶芸をやったりもしていました。

モノづくりの道に進むために、高校はデザイン系の学校に通い、卒業後は造形の会社に就職しました。そこでは、テーマパークに置かれるようなものや、子どもの遊具などを作っていました。最先端の資材を使うことができて、自社でデザインから施工までする業界では珍しい会社で、仕事は楽しかったです。でも仕事をするなかで、素材の安全性や、造形の過程で出る大量のゴミなどに疑問を抱くようになったんです。そして改めて考えたときに、実家で代々栽培してきた麻が思い浮かびました。麻は、日本で伝統的に使われてきた、安全で無駄のない素材です。そんな素材が身近にあるのに、自分が継がないとそれが途絶えてしまうことになるんだと。そのころ、周りの麻農家さんも少しずつ辞める人がいたんですね。それで、造形の会社を2年半で辞めて、麻の栽培を始めました。

野州地区は気候が穏やかで強い風が吹くことが少ないので、麻の栽培に向いています。ここで栽培している麻は、トチギシロという品種で、茎が細く高さがあるため、風が強いと倒れてしまうんです。トチギシロは、もともと栃木にあった品種と、福岡に自生していたTHC※含有ゼロの品種を掛け合わせた、ほぼTHCを含まない品種です。

麻の栽培は、成長が早い分、ばらつきが出ないように気を使います。種まきでは、機械を使わずすり足で土をかけていくのですが、土が均一になるように注意が必要です。それでもまばらに生えてしまったものは、都度こまめに選別します。麻は病害虫の害にあいにくいため農薬は必要ありませんが、肥料は使います。肥料も、地形を考慮して全体に均一に栄養がいくよう注意が必要です。成長にばらつきがあると、そこから枯れたり腐敗したりして、品質が落ちてしまうんです。

麻の栽培にはそういった難しさがありますが、収穫後の加工がより難しいところです。麻は、1つの茎から麻殻、精麻、麻垢という3つの繊維が取れるのですが、収穫後に発酵させてからこれらの繊維を分けて取ります。発酵は、麻舟というものに発酵菌の入った水を張り、そこに麻をくぐらせ、稲わらやむしろをかぶせて寝かせ、これを朝晩3日前後繰り返します。発酵が足りなくても発酵しすぎても、麻の品質は落ちてしまうので、麻を触った感触や発酵中の匂いなどから発酵の状態を見極め、温度や湿度など、繊細な調整が必要になるんです。

3種類の繊維は、麻殻は麻炭に、精麻は神事用、麻垢は麻紙になります。野州地区で栽培される麻は、昔から9割くらいが神事用でした。神事に使わない麻殻からできる麻炭は、かつて灰式カイロに使われていました。今でも使われているのが、打ち上げ花火です。麻炭は多孔質で軽いので、火薬に混ぜると花火がきれいに広がるそうです。僕が製炭を始めたのが6年ほど前で、その2年ほど前から、このあたりでは麻炭の製炭が途絶えていました。そのため、良い麻炭を作るためには自分で研究が必要でしたが、やはり受け継がれてきたものがなくなるのは惜しいと思い、当時は麻炭にかなり集中していましたね。それが少し落ち着き、2~3年前からは食品用の麻炭も販売しています。また、麻炭より前に、18年くらい前から麻紙作りもしています。原料となる麻垢は、当時使い道がなく畑の肥やしになっていたので、なにかに使いたいと始めました。和紙にも麻紙がありますが、一般的なものは麻が2割程度しか含まれていません。ここで作る麻紙は麻100%で、ほかにないものです。麻垢だけでなく麻殻や精麻も使うことで、さまざまな色合いや質感の麻紙を作っています。

モノづくりを志したところから、麻という素材の良さに気づき、麻栽培を継ぐことになって、今、麻という素材を活かすさまざまなモノづくりを展開していることを思うと、最初は継ぐつもりはなかったのに、つながっているんだなという感じがします。麻についてはまだ知られていないことも多いので、麻の栽培や麻を使ったモノづくりを通じて、もっと多くの人にその良さを知ってもらいたいと思っています。

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麻の伝統とモノづくり 野州麻紙工房 野州麻炭製炭所 代表  大森 芳紀氏

- 生産者さん紹介 - 2019年10月発刊 vol.145

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