出産をしてから食品表示を見ています。加工食品にはよく「うま味調味料(アミノ酸等)」と表示されています。
「化学調味料」とはどう違うのでしょうか。ネット上のレシピでもよく使われていますが、あまり体に良くないって本当ですか?
(所沢市・毎日が新発見の新米ママ)
A.刺激の強い添加物。頻繁に摂るのは避けて
答える人 岸江 治次
お総菜やお弁当、お菓子などさまざまな加工食品に含まれる、「うま味調味料」。ほんの少し加えるだけで、格段に味がよくなる魔法のような調味料です。実は、今はうま味調味料と呼ばれていますが、少し前までは「化学調味料」と呼ばれていました。1909年に池田菊苗博士が、昆布の中にあるうま味成分「グルタミン酸ナトリウム」の抽出に成功し、化学調味料として世に出しました。当時、“かがく”という言葉は最先端という認識でとらえられ、化学が生み出した画期的なおいしいもの。として、とても注目されたのです。昆布から抽出したものでしたから、安全で安心して利用できましたが、手間とコストがかかるのでとても高価でした。そこで、グルタミン酸ナトリウムを、もっと効率的に取り出すための研究が続けられ、さまざまな素材のうま味から、抽出することに成功します。原材料はサトウキビなど自然のものですが、調味料に使われるのは搾りきったカス。そこから取り出しているのです。
安く、たくさん作れるようになったことで、化学調味料は世界中へ広がりました。特に、中華料理店でよく使用されています。1960年代頃、アメリカ全土に中華料理店が次々と開業したのですが、吐き気や頭痛など、体調不良を訴える人が急増しました。「チャイニーズレストランシンドローム」といわれ、化学調味料の大量摂取が原因ではないかといわれています。科学や工業が目まぐるしいスピートで進歩した一方で、さまざまな環境問題や公害が問題になりました。化学調味料による体調不良は、食品公害の一つだったといえます。
時代は流れて1980年代、日本は好景気でバブルの絶頂期。経済的に豊かになると、本物の味を求めるようになります。それまで当たり前だった化学調味料は、いわゆる人工でつくられた味ですから、時代の流れにも合わなくなりました。街の食堂や加工食品にも、「化学調味料不使用」というワードが聞かれるように。経済成長が進みさまざまな公害などが起こったことで、科学の負の面が注目されたことも要因の一つでした。そして、負のイメージを払拭するために、化学調味料はうま味調味料と呼ばれるようになったのです。法律的にも食品表示の中に化学調味料という表示はなく、調味料(アミノ酸等)などの表示に変わりました。ここで注意したいのが、調味料と表示されているものの、日本の法律では添加物に分類されているということです。
つまり、食品ではなく添加物なので、頻繁に食べるものではないということ。食品の味、見た目、日持ちをよくするための、補助的な役割をする材料なのです。そのため、使用基準があります。一般的な食品に使用基準はありませんよね、人口的につくられた食品添加物は、めったやたらと摂ってはいけないというのが、大原則です。
しかし、残念なことに、お総菜やお弁当、加工食品や飲食店など、ほとんどの食品に使われています。安価な原材料に、ほんの少し加えるだけで、味をおいしくしできるので、とても便利なのでしょう。そして、もう一つ怖いところが、一度その味を知ってしまうと、舌がマヒしてしまうこと。とても強い味なので、脳が刺激の強い味を求めてしまうのです。
うま味調味料以外にも、酵母や麹菌など、うま味を出してくれる原材料はあります。「トルラ酵母」などがその一種で、比較的安全といわれていますが、自然界の栄養素と比べると、やはり不自然ではあります。自然界にある野菜や果物などには、アミノ酸をはじめ豊富な栄養が含まれています。それなのに、特殊なアミノ酸やグルタミン酸ナトリウムだけが、まとまって存在するということ自体が不自然です。
食品添加物の摂取をやめれば、舌は自然な状態に戻ります。素材本来の味やうま味を知って、不自然な味に馴染まないようにしていきたいものですね。