不思議な2項
私の年代ですと介護の悩みを聞く機会も多いのですが、そんなときに、まだ赤ちゃんの雰囲気も残す、小さな子どもに日常的に触れられるのは幸せだなぁと思います。
忙しくて自分の気が上がっているときほど、小さい子を抱きしめるとシューっと何かがおさまります。物理的に癒されるとしかいいようがありません。赤ちゃんや小さな子どもには、その時期にしかない命のエネルギーが確かにあると思います。胎児のときのエネルギーも直接さわれなくても凄まじいものです。人がそれに惹かれるのは当然のことで、「誕生」について人に教えるための民間資格もあるようです。
機会があり、小学4年生向けのそういった講座を拝見しました。コアとなるイメージ映像に見覚えが……と思って見ていたら、私が出産した助産院でのアクティブバースの光景でした。また、分娩の説明になるようなイラストは、分娩台にのらず、アクティブバースにありがちな姿勢を取っています。
なにより、講義の大半の内容が、私が出産した助産院の両親学級で聞く院長先生の話とそっくりでした。モデルの一つなのかもしれませんね。
だから、一番理想としているところはその助産院でおこなわれているようなお産なのだろうと予想しますが、助産院での出産率は、2011年の政府統計で0.9%。この少数派を、大手を振ってマーケティングにのせるのは難しいのか、その講座で説明される誕生とは、「医療介入のあるお産」「医療介入のないアクティブバース」という2分割でも、「医療介入のある経膣分娩(多数派)」と、「帝王切開(4割弱)」という二大メジャーでもなく、圧倒的少数のアクティブバースと、二番手の帝王切開、という不思議な構図になっていました。
上下はなくても左右はある
その分け方は経膣かどうかの観点から語られます。膣を通って生まれる赤ちゃんと、お腹に窓を開けて生まれる赤ちゃん。それはそれで特に病院においてはメジャーな区分けです。「お腹に窓を開ける」場合は、赤ちゃんがお医者さんを通して教えてくれる、というような内容で、経膣であるかどうかに優劣のないニュアンスで伝えられています。もちろん生まれ方の問題ではないので、そこは紛れもなく等価です。
ただ、産む側に注目すると2014年の政府統計にみる「一般病院における帝王切開娩出術の割合」は24.8%でここ30年で2.5倍、「一般診療所における帝王切開娩出術の割合」は13.6%でここ30年で2倍になっています。合わせると全分娩の38.4%がお腹に窓を開けて生まれています。その医療介入がその家族にとって一番の「自然」であるケースは必ずありますが、4割にも及ぼうとする全ての帝王切開が本当に、その処置が必要だった事例なのでしょうか。
もし必要なのだとしたら、なぜそれだけの人が帝王切開なのか、問いかける必要があると思います。たとえばペットだったら、品種改良の結果、帝王切開でしか出産できない犬、といった品種が実際いるそうで、私たちは、いつの間にか品種改良されちゃったのかしら……?
「分娩台にのった経膣分娩」と、「手術台にのった帝王切開」の医療介入のある二種が、現在の誕生での主流な選択肢です。他に医療介入のない自然なお産があり、そんなお産のほうが楽で楽しいかも?ということは、子どもにも伝えたいですよね。