体重という大問題
前回に引き続き、妊娠・出産にまつわる基準が変わった話を書きます。妊婦の体重管理の基準が変わって、この3月で1年がたちます。基準が変わる前は体重に悩む声をたくさん聞いたから、基準が変わって楽になった話を聞くのも納得です。
どう変わったかというと、体重が増えていい下限値がおおむね2~3㎏引き上がりました。15年以上前から聞いていた説ですが、肥満傾向にない妊婦さんが厳しい体重制限で小さい赤ちゃん(低出生体重児。かつての未熟児)を産むほうが将来のリスクが高い、という考え方が採用されて変更に至りました。
妊娠高血圧症候群を減らすための体重制限でした。しかし、肥満傾向にない妊婦さんは滅多に妊娠高血圧症候群にならない一方で、低出生体重児が増えました。お腹の中で「飢餓状態に置かれた」子どもは脂肪を蓄えやすいからだになるそうで、栄養過多な現代で生活習慣病になりやすくならないよう、防ぐ方向に変わったわけです。
「低出生体重児は生活習慣病になるリスクが高い」といわれると、烙印を押されたような気持ちになります。以前にも書きましたが、わたしは低出生体重児しか産んだことがありません。臨月になるとお腹の子の体重が増えなくなります。胎児を太らせるためにさつま芋を勧められ、がんばって食べて安静にしても、母子共に体重は増えない。だから、下限値より体重を増やすよう妊婦さんが指導される事態がある場合、それはそれで苦しいだろうと危惧します。
数字がすべてではない
新生児を体重だけで判断するのがどこまで有効なのか、今でもわたしは理解できていません。いろんなケースをご存じの産婦人科の老先生は「小さくても元気な子はいるから」とおっしゃいましたが、うちの子たちは低体重以外の問題はなくても問題視されました。しかし、母乳をよく飲み、産後1か月で平均まで大きくなります。その時点での成長曲線が大変異常なことになっても、その異常は見咎められたことがありませんでした。
産後の予想体重が足りなくても、上二人の出産時は医療介入のない分娩が可能でしたが、3人目は高齢出産と検査機械の誤りで引っ掛かり、異常とみなされ大病院に搬送されました。そこでの医療介入されたお産は大変不本意で恐ろしいものでしたが、一番不本意だったのは、低体重だからと産後2日目から新生児の入院室に子どもを取り上げられたことです。1時間半ごとに決められた量の乳を強制授乳されるので、わたしは意地でも搾乳して母乳を届けましたが(産後まもなくても出しやすくする方法があります)、どれだけ強制的に乳を注いでも嘘みたいに子どもの体重は増えず、結局自分で医師と掛け合って子どもを連れて無理やり退院。看護師たちに遠巻きにされる、寂しい退院だったのを覚えています。
その後、家に帰って子どもの好きなペースで乳を含ませると、ぐんぐん体重が増えました。あのまま病院にいたら、いたずらに入院期間が延びただけだと思います。もちろん低出生体重児の定義にある「身体の発育が未熟のまま出生した」場合もあるでしょうが、数字判断には限界があると思います。結局数字を超えたところに自分と子どもに合った食べ方があって、それを探りながら妊娠・出産を楽しむほうが、QOLに叶うこともあるわけです。