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ながれるようにととのえる

身体の内なる声を味方につけて、生きる力をととのえる内科医、鍼灸をおこなう漢方医のお話

やくも診療所 院長・医師

石井恵美 (いしいえみ)

眼科医を経て内科医、鍼灸をおこなう漢方専門医。漢方や鍼灸、生活の工夫や養生で、生来持っている生きる力をととのえ、身体との内なる対話から心地よさを感じられる診療と診療所を都会のオアシスにすることを目指す。
やくも診療所/東京都港区南麻布4-13-7 4階

「わからないこと」がわかるということ

投稿日:

私が西洋医学を学び始めたばかりのころは、たくさんの知識を手に入れれば、どんな難しい問題も解決できる気がしていた。そして、東洋医学を学び始めたときも、どんな身体の困りごとも、東洋医学の知識で対処できると思っていた。でも、どんな学問でもそうだが、学び始めるとつい「なんでもわかっている」という錯覚に陥りやすいものだ。ただ頭で理解しただけの知識ではなくて、実際に患者さんが抱えている問題と向き合っていくと、「わかること」と「わからないこと」、「できること」と「できないこと」に直面せざるを得なくなる。

例えば、「わかること」とは、検査で異常が出て、それに基づいて診断ができること。風邪であれば、この症状ならこの方法で、このくらいで回復するだろうと予測が立つときがある。見通しがつくことなのかもしれない。

一方、「わからないこと」とは、検査で異常がないけれども、困っている症状がある場合だ。病気が深刻でできることはすべてやったけれど、結果がどうなるかわからない。一番知りたい、いま本人の自己の治癒力がどれくらいあるのかは、検査では測れない。

例えば、胸の痛みを考えてみよう。心筋梗塞や狭心症という西洋医学の診断に該当し、治療で何とか対処できる場合、その方法で一時的な困難な状況を解消して楽になることができる。心臓カテーテルや外科手術で状態を改善できたとしても、最初からその病態が存在しなかった状態に身体を戻すことはできない。

心臓の血管に影響を及ぼす状態になってしまった背景を整えなければ、繰り返し同じような困難に身体や心が対処せざるを得なくなるだろう。本来は、その背景を整えられるように考え続けることが最も大切なのだが、思いのほか、多くの場合、それが後回しにされてしまっている気がする。

同じ胸の痛みでも、検査では異常が見当たらず、西洋医学の診断で明確な原因が特定できない場合は、どこに相談すべきか迷うことになる。私が普段おこなっている漢方専門医としての診療には、こういった方が相談に来られることが多い。

西洋医学の診断は、まるで悪者を探すかのように問題を特定しようとする傾向があり、問題が見当たらないと行き詰まってしまうことがある。そうなると、身体の検査で問題がなければ、身体の問題ではなく、心の問題かもしれないと考えがちだ。心は検査で測るのが難しい領域だからということもある。そういった現代医療の身体と心を分けて捉えることによる制限を超えるために、「身体と心が一体である」という東洋医学のアプローチや、症状そのものにアプローチする「標治」や体質改善や原因にアプローチする「本治」といった手法が、役立つだろう。また、少しでも心地よい状態になることを目指して、日々生活のなかでできることを探しながら、自身に合った養生を見つけていくことも、楽に生きるヒントになるだろう。治療や養生が目指すのは、自己の治癒力を妨げるものを取り除くことではないだろうか。

自覚症状がないほうがいいに決まっている。身体や心が健康で、心身が症状を出す必要がない状態は、すこぶる生きるのが楽なのかもしれない。添加物や農薬、化学物質、電磁波、心身のストレスなど、自己の治癒力を邪魔するものに満ちた現代社会では、それはなかなか難しいことだ。しかし、おそらく私たちが生きていくなかで、自分の身体や心が小さな声をあげ、助けを求めているなら、その内なる声はとても有難いことなのではないだろうか。その声が自身になにを伝えようとしているのか、その真意としっかり向き合い、それをわかろうとすることが、わからないことがなんなのかを理解する鍵となると思っている。その真摯な思いが、「わからないこと」がわかるための大切な道標になるのかもしれない。

- ながれるようにととのえる - 2023年10月発刊 vol.193

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