成果は通過点
何事にも基本があるように、動くこと、走ることの基本は「歩くこと」にあります。きちんと歩くことができないのに、走ることは難しいものです。
全国高校駅伝常連校の監督さんのお話を聞く機会がありました。その際、何度も繰り返されていたのは「特別な練習方法なんて存在しない。あるとすればきちんと歩くこと」だと。歩くという基本的な動作を大切にすることが、ケガなく速く走ることにつながると仰っていました。
高校生という人生の一時期を過ごすなかでは、選手一人ひとりの成長を見守る必要があるのでしょう。もしかしたら特定の大会だけに絞り、そこで結果を出すことだけを考えれば、とことん練習で追い込んでいけば結果は残せるのかも知れません。だけど、どんなに大きな大会でも選手生活のなかでは通過点でしかなく、ましてや人生のなかでの高校時代は通過点に過ぎない。卒業してから、その先もさらに活躍できる選手に育ってもらうためには、成長期には基本を疎かにはできないということのようです。
あらゆることに通ずる真理を聞かせていただいたように感じました。トレーナーであれば試合に出させて終わりではなく、試合後のその先のことまで考えておかなければならない。治療家としては、いかなる病気もケガも治療をして終わりではなく、その先の生活があることを考えておかなければならないことを再認識させられました。
偉人たちの成果
スゴイことを成し遂げる人は、なにもスゴイことをしているわけではなさそうです。当たり前に思える小さなことの一つひとつにも意味を見出し、丁寧に続けていけることこそが「スゴイこと」につながるのでしょう。
世界最高峰エベレストを無酸素、単独で史上初で登頂したラインホルト・メスナーは、その後も数々の偉業を成し遂げていますが、その理由は「臆病だったから」と言っています。山という大自然の中で不測の事態に備えつつ体力の消耗も考えて持ち物は最小限にする、文字通りに命懸けの準備と、無事に帰ってくるためのそのときそのときの最善の判断の積み重ねでしょう。
イチロー選手は、試合開始の数時間前には球場に入り、1時間以上かけて準備運動していくそうです。そして試合後には必ずグローブを磨く作業をする。幾多の大記録も毎日同じことの積み重ねに支えられての偉業達成なのですね。
彼らに共通するのはどんな偉業も通過点に過ぎないということ。何事も他人任せにはしないこと。そして、忙しいからとなにかを削ったり手を抜いたりは決してしないことでしょう。
視野を広げるヒント
忙しい、面倒くさい、しんどい……、つい口にしてしまいがちですね。「心を亡くす」と書くように、時間がないから忙しいわけではなく、心にゆとりがなくなって忙しくなるといえます。そんなときこそ、朝15分、早起きしてみる。できれば外に出て、少し散歩してみることをおすすめします。早朝の澄んだ空気を吸って、太陽に当たるだけでも心地のいいものです。がんばって早足で歩く必要はなく、ましてや走る必要もありません。
禅語に「逢花打花、逢月打月(花に逢えば花をたし、月に逢えば月にたす)」という言葉があります。花に出逢えばその花を味わう、月に出逢えば月を感じる。そのときそのときの出会いをあるがままで楽しんでみようという意味です。ゆったり自分のペースで歩きながら、自然にあるがままを感じてみるのです。住宅街にも小さな公園や花壇、農園があったりします。草花や作物から季節を感じることもあるでしょう。自宅の周囲であっても意外に知らないことがたくさんあります。いつの間にか新しいお店ができていたり、ちょっとした抜け道が見つかるかも知れません。自分の周囲にも自分の知らないことがあると知ることで、視野が拡がることもあるでしょう。
身体を健やかにしつつ、心も豊かにし、視野を拡げる体験、してみませんか。
圭鍼灸院 院長 鍼灸師
マクロビオティック・カウンセラー
西下 圭一(にしした けいいち)
新生児から高齢者まで、整形外科から内科まで。
年齢や症状を問わないオールラウンドな治療スタイルは「駆け込み寺」と称され医療関係者やセラピストも多数来院。
自身も生涯現役を目指すアスリートで動作解析・運動指導に定評がありプロ選手やトップアスリートに支持されている。
兵庫県明石市大久保町福田2-1-18サングリーン大久保1F
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