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法の舞台/舞台の法

日常のなかにある法律問題踊る弁護士の活動報告

弁護士/舞踏家

和田 浩 (わだ ひろし)

1977 年新潟県柏崎市生まれ。京都大学総合人間学部卒業。弁護士として、さまざまな分野の事件に取り組んでいる。なかでも、障害者の権利に関する案件に多く携わっている。他方、舞踏家として舞台活動もおこなっている。福祉、芸術、司法の連携について、あれこれ考えている。
縁(えにし)法律事務所 
京都市中京区新椹木町通二条上る角倉町215
075-746-5482

補助金不交付決定を考える

投稿日:

先月号まで、昨年開催された「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が、脅迫等によって開幕から3日で中止されたことについて、表現の自由、集会の自由といった憲法の観点から分析しました。ところで、「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれた後、文化庁は、愛知県に交付予定だった7800万円の補助金を全額不交付とする決定をしました。今月はこの問題について、行政法の観点から検討してみます。

なぜ不交付が決定されたのか

文化庁が問題視したのは、愛知県が、「展覧会の開催に当たり、来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず、それらの事実を申告することなく採択の決定通知を受領」したことや、その後の補助金交付についての「審査段階においても、文化庁から問合せを受けるまでそれらの事実を申告し」なかったことです。そして、こうした愛知県の行為は「不適当な行為」であり、「申請された事業は事業全体で審査するものであり、さらに、当該事業については、申請金額も同事業全体として不可分一体な申請がなされてい」るので、芸術祭全体に対する補助金を全額不交付とするとされました。なお、根拠条文として「補助金適正化法6条等」が挙げられました(以上、括弧内は文化庁HPより引用)。

この決定にある多くの問題

ポイントの1つは、文化庁が、愛知県の補助金申請手続に問題があるとしており、企画展の内容に触れていないことです。以前紹介しましたが、「表現の自由」の規制には、表現内容を審査しておこなわれる「内容規制」と、それとは別の観点からおこなわれる「内容中立規制」があり、後者のほうが緩やかに認められます。おそらく文化庁はこれをふまえ、少なくとも建前上は企画展の内容に踏み込んで審査したとは説明しなかったのでしょう。ところがそのせいで、補助金不交付決定の理由はかえって荒唐無稽に感じられます。文化庁の説明では、部外者からの脅迫等により展覧会の安全が脅かされる自体が予想されるならば、事前に文化庁に申告しなければならないということになります。しかし、主催者が部外者からの脅迫等の可能性を事前に十全に予測することなど不可能ですし、仮に一定程度予測可能でも、それを文化庁に申告する法的義務はどこにもないでしょう。また、実際に安全を脅かすような事態が発生し、その時点で申告がなされたのだとすれば、その時点で文化庁が改めて審査をすれば良いはずです。にもかかわらず、文化庁が改めて審査をすることなく補助金不交付を決定したのは不可解です。
 
さらに、不交付決定の法的根拠として「補助金適正化法6条等」が挙げられていますが、この「等」がなにを指すのかわかりませんし、「6条」についても、条文のどの部分の問題なのか明らかにされていません。行政法の観点からすると、根拠条文が明示されていないことは大きな問題です。また、問題となった企画展は、予算規模でいうと芸術祭全体のわずか0・39%とされています。そうであるとすれば、仮に補助金を不交付とするとしても、その金額は、芸術祭全体に支給される予定だった7800万円の0・39%にとどめるべきでしょう。これ以外にも多くの問題が指摘できますが、紙幅の都合もあり、この程度にとどめておきます。

かけがえのない「表現の自由」

今回の補助金不交付決定は、今後、全国各地の芸術祭や文化イベントに対して大きな萎縮効果を発生させるでしょう。そのことが日本社会を豊かにするとは到底思えません。文化庁はもちろん、私たちも今こそ、「表現の自由」のかけがえのなさについて、改めて銘記しなければならないと思っています。

- 法の舞台/舞台の法 - 2020年4月発刊 vol.151

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