夏といえば、なにを連想しますか? 私は「遊び」が浮かびます。海や山、川、公園で遊んだ子ども時代の記憶がよみがえります。川遊びや臨海学校、友達とのお泊まり会など、そのときの感情や感覚は40年以上経っても鮮明に残っています。
しかし、大人になると、私たちは「遊ぶ」ことがめっきり少なくなります。仕事や家事に追われ、やることが常に山積みの状態です。いかに効率よく予定を詰め込むかが優先され、そこには「遊び」の余地がありません。私も猛烈社員だったころは、仕事優先で、遊ぶ余裕を失っていました。
では、大人には遊びは不要なのでしょうか? 私の答えは「ノー」です。大人も大いに遊びましょう。今回は「遊びの効用」をお伝えします。読み終わるころには、きっとワクワクしながら、自由な発想で人生を楽しむ秘訣を知ることができるでしょう。
大人が遊ぶとどうなるの?
まず、「遊び」とは、なんだと思いますか? 娯楽? ナイトライフ? ストレス解消法? 私はどれも、表面的な捉え方だと考えています。私が考える「遊び」の定義は、「特定の結果や成果を期待せず、そのときやってみたいことを自由にのびのびおこなうこと」です。特徴は、自発性、自由度、創造性。一過性の楽しさだけを追う享楽ではありません。創造力の源泉なのです。
そうはいっても、「遊びは無駄」と考える方や罪悪感を感じる方も多いようです。しかし、心理学者のジャン・ピアジェは、遊びを子どもの発達における重要な活動と位置づけ、学習・成長プロセスの一部と考えました。遊びは社会的スキルや問題解決能力の発達にも寄与します。そんな「遊び」は、子どもだけでなく、大人にとっても重要で、創造的な思考を促進する効果があります。
無心に遊ぶと、脳科学で注目されている「アハ! 体験」が起きます。「アハ! 体験」とは、なにかが突然わかったり、ひらめく瞬間のことです。たとえば、難しい問題をずっと考えていて、急に答えがひらめいたときや、理解できなかったことが急に腑に落ちる瞬間のことです。これは、どのような仕事にも必要な体験ではないでしょうか?
無邪気な賢者の遊び方
「遊び」が大人にも必要な活動であることはおわかりいただけたと思いますが、具体的な「遊び」のイメージができないかもしれませんね。そこで、私の「遊び」の師匠、井垣伸子先生(通称NoBUさん)をご紹介します。NoBUさんは、数学者で関西学院大学名誉教授です。筋金入りの研究者・教育者で、人生を楽しむ達人でもあり、遊びの名人です。遊びの最中に NoBUさんから送られてくる写真や動画は、浮き輪を持って川遊びしている満面の笑顔や、巨大ブランコを子どものように無心で漕ぎながら「たっのしいよ~」と叫んでいる無邪気なお姿。こちらまで楽しくなります。
そんなNoBUさんと一緒に過ごす「遊び」がテーマの合宿を瀬戸内海で主催しました。1泊2日でしたが、日ごろ、仕事人間と化していた参加者の皆さんは無邪気な子どもに戻って、存分に遊びました。具体的には、朝から大きな浮き輪を抱え海で魚になる体験(海に体を委ねて、目的なくぷかぷか浮いてみる)、がんばって漕いでないのに高速で走れる自転車の乗り方、無心で体と音につながるドラム練習など、とにかく思いつくものを次々やっていきました。遊び満載。そんな体験をした参加者は、「そうか! 制限していたのは自分だったのか」「こんなに枷がない体験は初めて!」「自分の将来が不安だったけど、楽しいイメージができた」など、それぞれの「アハ! 体験」が起きたのでした。
あなたも、ぜひ、この夏、いっぱい遊んでみませんか?