ここ宮古島には、農薬や化学肥料を使わずにサトウキビや野菜を栽培している先輩農家さんがいらっしゃいます。かつて今のような農薬が存在しない時代にも、勿論サトウキビは栽培されていました。
一方で、(農地購入の資金調達の関係で資料提出した際、)行政担当者が『農薬を使わなければサトウキビはできない』と公言し、『(あなたが農薬を使わない為に)近隣農家に害虫被害が及んだらどうするか?』とまで問うてこられる現実があります。
農薬の誤飲事故が新聞記事になることもありましたが、一気飲みすれば死んでしまうような劇薬を『(希釈率、散布のタイミング・数量など)適正管理の下で使えば問題ない』と理解・納得することは、『(原発事故直後、)低線量被爆なのでただちに健康に影響はない』と説明されて納得することと、大きく変わらないように感じます。
今日食べたかぼちゃの栽培に使われた農薬が原因で明日ただちに病気になるようなことはありませんが、人体に対する安全性が保証されている訳ではなく、遺伝も含めた蓄積影響は目に見えない・感じられない分、急性症状にも増して恐ろしいように感じます。また、複数種薬物の複合影響の検査・確認は現実的に不可能で、たとえば『壮大な人体実験が行われている』とさえ言われます。
ただ、安全性については、(感受性が異なる老若男女、様々な人間に対して、多くの前提条件の下で集められた実験データをもってしても、)明確に線引き結論付けられることはなく、最終的には生産者や消費者がどのように考えて、何を選ぶかという選択の自由に委ねられることになるかと思います。
有機農産物の割合が1%にも満たない現状が示すことは単純ではないと感じています。 病害虫被害に泣き寝入ることなく、作業効率高く省力・短時間で作業を完了し、生産効率高く収穫し、消費者には安価で提供しながら、適正な利益を上げようと願うことは農家として当然のことだと思います。
その手段として使用する農薬や化学肥料の是非については、安全性や環境負荷の観点で大いに疑問が残るままなおざりにされ、食料の安定供給を考える政府立場とそれに貢献するJA・薬品メーカ・生産者と消費者が当面の経済的な都合を優先してきた結果が現状を作り出したのであろうと思います。
除草剤にしても殺虫剤にしても、確かにその効果は凄まじく、ものの見事に草が枯れて死んでいき、虫の死骸が畑の表面を覆うそうです。
自身が農産事業を始めるまでは、無農薬栽培農家さんからの直接購入という形で、一消費者として有機農業を間接的に応援してきました。今は一生産者の立場で、『実際にやってみる』機会を得ました。そして、昨年の私たちが植えつけたサトウキビも一昨年前の夏植え、昨年の春植え共に無事に収穫時期を迎えました。これからも地道に淡々と作業を続け実績を積み、身をもって証明していきたいと思います。
行政担当者に『無農薬栽培ではできない』と言われ、『実際にやっている先輩農家さんがいるじゃないですか?』と切り返しても、ほぼ全農家さんが慣行農法でサトウキビ栽培している宮古島にあって取り合ってもらえず、残念な思いをして引き返しました。その時、アインシュタインが遺した言葉を思い出しました。「我々の直面する重要な問題はその問題を作ったときと同じ考えのレベルで解決することはできない」
数十年後の明るい未来・ありたい姿に向けて、自然の豊かさ・逞しさを感じながら、毎日を積み重ねていきたいと思います。
(比率的には非常に少ないですが)無農薬栽培を実践する農家さんはたくさんいます。近くに見つけたら、有機生産者を応援する為にも、是非買って・食べてみてください。
松本克也
松本克也氏 プレマ宮古島プロジェクトリーダー(兼農業生産法人(株)オルタナティブファーム宮古代表取締役) 2012年4月まで自動車会社に勤務。車体製造の接合技術開発に心血を注ぎ、エンジニア一筋の人生を送る。2011年12月にもともとプレマファンだった姉から「プレマ・宮古島プロジェクトの発足とスタッフ募集」のメルマガ情報を聞いて『これだ!』と直感し、転職を決意。そこからはとんとん拍子に事が進み、家族で宮古島に移住。今ではすっかり都人(実は京都出身)ならぬ宮古人になりました。 オルタナティブファーム宮古のfaceBookページはこちら>> |
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