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法の舞台/舞台の法

日常のなかにある法律問題踊る弁護士の活動報告

弁護士/舞踏家

和田 浩 (わだ ひろし)

1977 年新潟県柏崎市生まれ。京都大学総合人間学部卒業。弁護士として、さまざまな分野の事件に取り組んでいる。なかでも、障害者の権利に関する案件に多く携わっている。他方、舞踏家として舞台活動もおこなっている。福祉、芸術、司法の連携について、あれこれ考えている。
縁(えにし)法律事務所 
京都市中京区新椹木町通二条上る角倉町215
075-746-5482

新型インフルエンザ等対策特別措置法

投稿日:

先月号では「行政処分」、行政処分を争う手段たる「審査請求」についてご紹介しました。そして今月は、私が代理人として審査請求をおこない、行政処分が取り消された例を紹介する予定でした。
 
しかし、現在、新型コロナウイルスの感染が拡大し、私たちの生活にも甚大な影響が生じており、多くの方が新型コロナウイルスに関する政治や社会の動きに多大な関心を寄せていると思われます。今回は従前の予定を変更し、新型コロナウイルスに関する法律問題についてご紹介したいと思います。もっとも、現実がめまぐるしく動いているため、この文章が掲載されるころには、時機に遅れた内容となっているかもしれません。

緊急事態宣言と特措法

新型コロナウイルス感染症の対策について定められている法律は、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下、「特措法」)です。特措法はもともと、新型インフルエンザ感染症をおもな対象としていましたが、今年3月の法改正で新型コロナウイルス感染症も対象に加えられました。
 
そして、4月7日、内閣総理大臣が、特措法に基づいて、「緊急事態宣言」を発令しました(「特措法」32条1項)。緊急事態宣言がなされなくても、都道府県知事は個人や団体に対して、新型コロナウイルス感染症対策の実施に関する必要な協力を要請できますが(24条9項)、緊急事態宣言がなされたことにより、知事はより強い手段を用いることが可能になりました。たとえば都道府県知事は住民に対して、自宅等から外出しないよう要請することができます(45条1項)。ただし、これはあくまで要請にすぎないため、強制力はありません。
 
また緊急事態宣言により、知事は、学校、社会福祉施設、興行場その他施設を管理する者などに対して、当該施設の使用制限や停止の措置を講ずるよう要請することができるようになります(45条2項)。これもあくまで要請に過ぎないため、強制力はありませんが、都道府県知事は正当な理由なくこの要請に応じない施設管理者等に対して、要請にかかる措置を講ずるよう指示することができます(45条3項)。この指示の法的性質について、内閣官房は行政処分、すなわち直接国民の権利利益を形成するものであると説明しています。すなわち、要請の場合とは異なり、指示を受けた者は、それに従う義務が生じます。また知事は、要請や指示をおこなった場合、遅滞なくその旨を公表しなければなりません(45条4項)。
 
では、具体的にみてみましょう。4月下旬ごろから、複数の都道府県において、パチンコ店に対する休業の要請と、それに従わなかった店名の公表がおこなわれました。これらを特措法に基づき検討すると、まず、特措法24条9条に基づく協力要請がおこなわれ、従わなかったパチンコ店について、特措法45条2項に基づく休業要請と同条4項に基づく公表がなされたものと説明できます。
 
また兵庫県知事は、特措法45条2項の休業要請に応じないパチンコ店に、同条3項に基づく休業の指示を出す意向を示しています(4月30日現在)。

社会防衛と人権

新型コロナウイルスの蔓延を防ぐためには、国民の協力と政治的決断の双方が必要なのは間違いないでしょう。しかし、緊急事態下においては、社会防衛の名目により、個人の人権の侵害・制約が横行する可能性が飛躍的に高まります。実際に、私たちの日常生活および社会生活は、従前と比べて著しく縮小しているものと思われます。休業に追い込まれた事業者に対する経済的補償も十分とはいえません。
 
先に述べたように、緊急時においては社会防衛の要請が高まりますが、違法な人権侵害がなされるべきではありません。その意味で弁護士は、緊急事態宣言下においても変わらず、あるいは、いっそう人権の擁護のために社会を注視しなければならないでしょう。

- 法の舞台/舞台の法 - 2020年6月発刊 vol.153

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