先月号のコラムでは、少年法の理念や、少年事件の手続の概要についてご紹介しました。
今月号は、家庭裁判所における少年事件の手続について、先月号よりも詳しくご紹介します。
家庭裁判所への送致と観護措置
先月号でご紹介したとおり、少年の被疑事件について犯罪の嫌疑がある場合、捜査機関は捜査を終えたあと、事件を家庭裁判所に送致することとされています(少年法41条、42条)。成人の刑事事件では、検察官が起訴するかどうかを決定する権限を有していますが、少年の被疑事件については、捜査機関はすべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。
次に、送致を受けた家庭裁判所は、事案が軽微な場合などには「審判不開始」という決定をしますが(19条1項)、審判を開始するのが相当であると認めた場合には、「審判開始」の決定をし(21条)、非行事実の有無や、再非行の可能性などの調査をおこないます。
他方、事件が家庭裁判所に送致された時点で、少年に対して「観護措置」という決定がなされ、少年が少年鑑別所に送致されることがあります(17条1項2号)。
少年鑑別所というのは、少年に罰を与えるための施設ではなく、少年の性格や経歴、家庭環境等を調査して、少年を鑑別するための施設です。具体的には、少年に対して、作文や描画等の課題が与えられ、少年の知能検査や心理検査、行動観察等もおこなわれます。そして、その結果が、鑑別結果通知書という形で家庭裁判所に提出されます。
観護措置の期間は、法律上、原則として2週間以内とされており、特に継続の必要がある場合には1回だけ更新することができることとされています(17条3項、4項本文)。ただ、実務上はほとんどすべての事件で更新がされており、少年は、4週間弱の期間、少年鑑別所に収容されることになります。そして、その期間の内に、家庭裁判所で審判がなされることになります。
家庭裁判所調査官
家庭裁判所における少年事件の手続で特徴的なのは、家庭裁判所調査官という専門職が関与することです。
家庭裁判所調査官は、心理学、社会学、法律学等を学び、国家試験に合格した後に、最高裁判所の研修所で研修を受けた専門職です。少年事件においては、非行の内容、少年の知能、性格、生育歴、家庭環境、交遊関係、学校や職場の状況等を幅広く調査・分析します。具体的には、少年鑑別所に収容されている少年と何度も面談したり、少年の保護者を家庭裁判所に呼び出して面談したりします。
そして、審判の数日前には少年調査票という報告書を完成させて、裁判官に対して調査の内容を報告します。少年調査票のなかでは、少年に課すべき処分についての意見も述べられます。
審判
以上のように、審判までの間に、少年鑑別所や調査官による鑑別・調査が実施され、それぞれ報告がなされますが、最終的に少年に対する審判をおこなうのは、裁判官です。
裁判官は、鑑別結果通知書や少年調査票のほか、捜査機関から送られてきた事件記録を精査したうえで、審判に臨みます。審判では、裁判官は、少年に対して自ら質問をし、非行事実のことや、反省の有無・程度、今後の仕事・生活等について確認します。そして、多くの場合、その日のうちに裁判官が最終的な処分をおこないます。最終的な処分の種類については、先月号のコラムでご紹介したとおりです。
ところで、弁護士は、少年事件の手続にどう関与するのでしょうか。これについては、来月号でご紹介します。