宮古島のプライベートガイドでご案内する友利真海さんが作るカツオの「なまり節」を紹介します。なまり節とは、カツオを茹で上げ、薪窯から上がる熱と煙で焙乾(燻し乾燥)したものです。
なまり節はさまざまな使い方で美味しく食べられます。炒めたり、煮たり、汁物に入たりしても、カツオの出汁や旨みが料理に溶け出して美味しい。ポン酢やマヨネーズで和え物にしたり、サラダやサンドイッチに入れたりしても、噛む程に旨みがにじみ出ます。
希少な伝統技術〜手火山式の焙乾〜
カツオを並べた蒸籠を窯の上に載せ、火に近い距離で焙乾することで、カツオの旨みを中に閉じ込め、芳ばしい香りとともに、中はしっとりとした、なまり節ならではの仕上りが生まれます。真海さんが薪に使うのは、宮古島に自生するモクマオウという樹木。火力や火持ち、香りの具合やカツオの風味を邪魔しない最適な薪だそうです。手火山式の焙乾は、江戸時代から続く伝統技術。直にカツオに手で触れて温度を測りながらきめ細かな火の調整が必要で、手間がかかり量産に向かないことに加えて、熟練の技が必要なことから、いまではこの製法を伝承している工場は国内僅少だそうです。
真海さんが先代から技術を伝承する際、「いま、薪を2本くべなさい」という指示が出たことがあったそうで、2時間近い焙乾工程のなかで、指示のタイミングと薪の数の絶妙さに、その技術の繊細さを実感したそうです。真海さんの作業風景や所作を見ていると、あまりにもスムーズで自然過ぎて、素人にはその技術の凄さに気づくことすらできません。代替りしてから、カツオと火の距離をさらに縮め、芳ばしさを高める改良を続けてこられたというから、真海さんの職人としてのこだわりに感嘆します。
元漁師の祖父と父が始めたカツオ工場を24歳の若さで継いだ真海さんが時代を超えて支えて繋いでいるものは、実は伝統技術・食文化だけではありません。それは次回お伝えします。
伝統の食文化、職人技術とともに島の誇りを守り継ぐ真海さん