不妊に悩む女性が増加しています。仕事と家事を同時にこなす女性や一人目の子どもに恵まれても二人目の不妊に悩むご相談もよくお受けします。このような場合、生理があっても排卵がおこなわれていない無排卵月経になっていることがあります。
無排卵月経では子宮に送るべき卵子が放出されないので妊娠はしませんし、排卵後の卵胞が変化してできる黄体ができませんので黄体ホルモンであるプロゲステロンが産生されません。無排卵でもエストロゲンは分泌されているのでエストロゲン優位となります。
充分な時間とエネルギーがあればホルモンバランスが原因となる不調や不妊に悩まされることは少ないのですが、競争社会で責任ある仕事をフルタイムでおこなうだけでもストレスフルなうえ、育児が加わり、一人でゆっくり過ごす時間はもちろん、家族で楽しむ時間も子どもの話をゆっくり聞く余裕もない状態はまさにストレスに晒され続ける状態が日常化しているといえます。
副腎疲労
副腎という臓器の働きをご存じでしょうか。腎臓の上にある小さな器官で、生体の恒常性維持に不可欠なホルモンや抗ストレスホルモン(コーチゾール・コルチコステロン)を分泌しています。 過剰なストレスがかかると副腎はホルモンを出しっ放しにします。副腎を酷使するとやがて疲弊し、ホルモンの分泌が悪くなり、徐々にストレスに対処できなくなり、その結果慢性疲労やうつ症状などが出ます。これが、「副腎疲労」で、忙しい女性の副腎も疲労状態となりがちです。実はプロゲステロンは卵巣の他、副腎でもコーチゾールやコルチコステロンの前駆物質として作られますが、副腎疲労状態ではプロゲステロンとしてとどまる余裕がありません。
がんばる女性の年頃では体型維持のために(無理な)食事制限をおこなうう傾向も見られますが副腎がフル稼働して生存を優先している場合、身体は代謝を落としています。さらに血糖値をコントロールする副腎ホルモンの不足で血糖値が不安定になり、消化吸収も不良となっています。ストレスの多い状態でウエイトコントロールが難しいのはこのためです。
骨の形成に必要なプロゲステロンが不足すれば骨粗鬆症が徐々に進行します。ホルモンバランスに翻弄されがちな女性に対して前更年期、更年期以降に定期的な骨粗鬆症検査が推奨されるのはこのためです。過度なストレスがかかり、激しいトレーニングをおこなう女性アスリートに無排卵月経が頻発し、やがて月経がストップする例が見られるのも前述の理由からです。アスリートに疲労骨折が多いのもここに原因の一端があります。
副腎に必要な栄養素
副腎の細胞は多くのビタミンCを必要としますが、ストレスに晒される場合は特に必要量が増加します。多くの動物は必要なビタミンCを体内で作ることが可能ですがヒトは自分の体内でビタミンCを作ることができません。ビタミンCの食事摂取基準の推奨量は、成人で100mgとされていますが、病気、感染症、手術、怪我や炎症、疲労、代謝ストレス、心理ストレスがある場合はこの量では到底賄えません。動物性食品は体に炎症を起こす食べ物なので食べるだけでビタミンCが不足します。私は植物性の食材をなるべく精製加工することなく食べる食事、PBWF(プラントベースホールフード)を推奨していますが、それでもストレスが多い場合などはビタミンCが不足しがちになります。ビタミンCは摂りすぎることによる弊害がなく、摂れば摂るほどよいのですが経口摂取による腸管からの吸収には限界があります。クリニックでは高濃度ビタミンC点滴をおすすめしています。