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法の舞台/舞台の法

日常のなかにある法律問題踊る弁護士の活動報告

弁護士/舞踏家

和田 浩 (わだ ひろし)

1977 年新潟県柏崎市生まれ。京都大学総合人間学部卒業。弁護士として、さまざまな分野の事件に取り組んでいる。なかでも、障害者の権利に関する案件に多く携わっている。他方、舞踏家として舞台活動もおこなっている。福祉、芸術、司法の連携について、あれこれ考えている。
縁(えにし)法律事務所 
京都市中京区新椹木町通二条上る角倉町215
075-746-5482

ALS介護保障訴訟

投稿日:

令和5年10月31日、千葉地方裁判所で、障害者の介護保障に関する重要な判決がありました。

今回は、この判決について、ご紹介したいと思います。

重度障害者の在宅生活

私たちは、本来、障害の有無にかかわらず、自分の望むべき場所で生活する権利を有しています。重度の身体障害を有する方であっても、ご自宅での生活を希望される場合には、ヘルパーなどによる介護を受けながら、それを実現する権利を有しています。

こうした重度障害者に対する長時間の介護として、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」は、「重度訪問介護」というサービスを定めています。これにより、重度障害者の方も、公費により介護ヘルパーを利用することが可能になります。

もっとも、公費の支給される範囲については、地方自治体が決定することになっています。そのため、重度障害者の方がご自宅で生活を送るのに十分な公費の支給がなされない場合もあります。

例えば、身体がまったく動かない障害者の方の場合には、1日24時間、介護者が近くにいる必要がありますが、自治体が、常に1日24時間分の公費を支給してくれるとは限りません。その場合、不足する部分の介護サービスについては、障害を有する方が自ら費用を負担したり、介護事業者が持ち出しで介護サービスを提供したりしているのが現状です。

しかし、本来、常時介護が必要な方に対しては、1日24時間分の公費の支給がなされるべきです。

千葉地裁令和5年10月31日判決の事案は、自治体が1日24時間分の公費の支給をしなかったことについて、1日24時間の公費支給の義務付けを求めてなされた訴訟です。

当事者の方とご家族

原告の方は、筋萎縮性側索硬化症(A‌L‌S)という障害を有しています。A‌L‌Sというのは、原因不明の進行性難病であり、しだいに筋肉が動かなくなるという特徴があります。そのため、A‌L‌Sを患う方が日常生活を送るにあたり、常時介護が必要になります。

原告の方は、A市において、妻及び幼い子、さらには高齢の母と同居生活をされていました。

原告の妻は、もともと専業主婦でしたが、原告がA‌L‌Sにより退職せざるを得なくなったことにより、家計を支えるためにアルバイトをするようになりました。そして、これと並行して、原告の妻は、原告の介護と子の育児、さらには義母の介護も担っていたことから、心身の限界を超える負担が生じていました。

もしも介護ヘルパーによる常時介護が認められれば、原告の妻の負担は軽減しますが、A市は、一定時間は妻による介護が期待できるとして、1日24時間の公費による介護を認めませんでした。

千葉地裁判決

そうしたなかで、原告は、1日24時間の公費による介護を求めて、訴訟を提起しました。

そして、千葉地裁は、判決において、原告の妻の介護が期待できるというA市の主張を、「皮相的な見方を前提とした主張」と批判し、原告の病態や原告の妻の介護状況等を踏まえて、A市に対して、1日24時間の公的介護を義務付けました。

千葉地裁の判決は、介護保障に関する訴訟において、初めて1日24時間の公的介護を義務付けたものです。

障害者の方に対する必要な介護支給量の判断は、それぞれの方の病態や状況により異なるものではありますが、今回の画期的な判決は、他の事案においても参照されるべきでしょう。

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