宮古島に近い気候や植生を持った文化の異なる地域に積極的に出向くようにしています。そして、先日、ベトナムのホーチミンに行ってきました。市場を散策してドリアンやジャックフルーツなど宮古島にない熱帯果実を食べ、植物園で宮古島との植生の相違を見学しました。現地ツアーも活用して、穀倉地帯のメコンデルタの見学やベトナム戦争の証跡博物館、南ベトナム解放民族戦線の地下基地を訪問しました。そのなかで最も印象に残ることになった出来事をご紹介します。
私は「スマホを落としたことに気づいて、戻ったらなくなっている」という大失態をしてしまいました。休憩していた場所は小児病院前の待合広場で、観光客が不注意で落としたスマホの行方など、取り合ってもらえるところはありません。小児病院の警備の方に確認してもらうと、地元の女性が持ち去る様子が防犯カメラに記録されていました。
その後、緊急連絡が取れなくなったことをSNSに投稿したところ、「南の島には犯罪が多い」というコメントの返信を見つけました。1885年から1945年までのフランス支配や日本の大東亜共栄圏などによる、ベトナムの資源奪取を狙った植民地化政策は、小さい窃盗とはレベルやスケールの違う「国家犯罪」であったと思います。東西冷戦の巻き添えを食らった1955年から1975年までのベトナム戦争でも、後世に被害を残す化学兵器・枯葉剤の使用などにより、ベトナムは経済発展の機会を破壊されてきました。その結果として現在、発展途上のベトナムがあります。
その後、警備スタッフ内でカメラ映像を共有し、子どもの診察に来ていたお母さんまで「ベトナムがこんな国だと思われたくないので」と微笑みながら、カメラに映った女性を探す協力をしてくれました。私の不注意が不意の気心を起こさせてしまったことに、申し訳なさを感じ諦めた翌日、「スマホ確保」のご連絡をもらいました。なんの代償もなく、手間をかけてくださったベトナムの方々に敬意と尊厳を感じる、最も印象深い出来事になりました。
メコンデルタの散策。ニッパヤシのトンネルを進む