不登校、登園・登校しぶり、起立性調節障害などの不定愁訴。こうしたお子さんの相談が増えています。原因の多くに敏感な体質やトラウマが関わっています。それぞれに対応した西洋薬や漢方薬を処方して症状が緩和することはありますが、多くの場合、長期間続いたり、改善と悪化を繰り返したりします。その場合、親御さんの手出し口出しをできるだけ減らしてもらいます。本人が好きなことを思う存分やってみる、また、嫌なことはできるだけやめてみるようにすると、見違えるほど元気になることがあります。
それでも良くならない場合、お母さんのストレスが影響していることが多いようです。これまでにも「自分を褒める」ことの大切さをお話ししていますが、お母さんが自分を褒められない、つまり、お母さん自身の自己否定が、鏡となって子どもの不都合な言動を引き出している可能性があります。お母さん自身が、「ちゃんとできていないなぁ」と自分を責めていると、お子さんも自分のことを「ちゃんとできないだめな子」だと無意識に思ってしまいます。そして、いつも自分のことを「ちゃんとしているか」見張るのです。自分はちゃんとできない子だという自己否定が心の奥に隠れています。
不思議ですが、子どもは無意識に母親の自己否定感を感じ取ります。子どもはお母さんが大好き。お母さんに笑顔になってほしいのです。そのために、子どもが無意識で取る行動が大きく分けると2パターンあるようです。
①お母さんに合わせようとする
お手伝いをしたり、お利口さんになったり、言うことをよくきく子になります。お母さんの心を刺激しないよう、苦痛を減らそうとしているようです。
②お母さんの心を刺激する
無意識にお母さんの一番嫌がることををします。イライラさせてストレスを限界まで増やすので、まるで迷惑をかけようとしているように感じます。
子は親の思い込みを壊してくれる
人は「思い込み」に囚われて、無意識にたくさんのルールを自分に課してがんばって生きています。子どもは、そうしたお母さんの「思い込み」を壊そうとしてくれる存在です。「不登校」もお母さんの思い込みを壊そうとしている場合がほとんどです。学校や成績、世間の常識や価値観、夫婦関係などの思い込みが多いようです。すべてに共通するのは「お母さんもう無理しなくてもいいよ!」という子どもたちの心の叫び。それが「不登校」という形になって現れているように感じます。
お母さんの思い込みの原因は、その母親にあることが多いようです。母親の価値観で、子どもは物事の善し悪しを判断することを学習します。母親の機嫌が良くなることが正しいこと、機嫌が悪くなることが間違っていることと自分の脳にインストールします。母親に見捨てられては生きていけないと命がけで学習するため、強い刷り込みとなります。この価値観は簡単には壊せません。壊すタイミングが思春期、反抗期にやってきます。しかし、母親がとても大変な状況だと、強く反抗できず、壊せないままその年齢を終え、母親の価値観を持ち続け、満たされない感覚のまま大人になります。母親を反面教師にしている場合は、さらに事態がややこしくなります。
「自分を褒める練習」を続けていると、自分と母親を相対的な関係に捉え直すことができるようになり、心の自立ができるようになります。お母さんが自信を取り戻して、思い込みを捨て、活き活きと自分の人生を生き始めると、子どもの状態はグングン良くなっていきます。それまでお母さんのために使っていたエネルギーを、自分のために使えるようになるので、自然と元気が出てきます。不登校はチャンス。子ども自身が本当にやりたいことを見つけるきっかけにできます。また家族の問題に気づくきっかけにもなります。