イライラする、不安感、寝つけない、夜中に目が覚める、息苦しい、動悸、ふるえ、めまい、肩こり、頭痛、喉の異物感、咳ばらい、食欲低下、ゲップ、胃の痛み、胃酸が上がる、パニックなど、これらの症状で困っている方は「不安」が原因かもしれません。　不安からくる症状や、不安感そのもので困っている患者さんが多いので、対処法をまとめてみたいと思います。

不安の仕組み

まずは不安の仕組みを知るために、不安を止める方法ではなく、不安になる方法を考えてみましょう。

普段不安を感じない人でも、嫌な出来事の記憶を握りしめたまま、未来について考えると不安になることができます。つまり、以前経験した嫌なことが、今後また起きるかもしれない、という思考が不安感を連れてくるのです。脳は、問題が起きそうだと感じると、あらかじめ準備をしようと、様々な場面を想定します。ただ、未来のことは不確定要素が多く、思考はいつまでも止まることができません。神さまでもない限り、１秒先に何が起きるかさえわからないのですから、人が不安になるのは当たり前のことだ、ともいえます。

以前、一般的な病院の小児科に勤務していたとき、仕事中に急に動悸がして冷や汗がでるという症状が出たことがありました。軽いパニック症だったのですが、今その時の状況を冷静に考えてみると、本当にやりたいことができずに、いつまでこの状況が続くのだろうかと、意識が未来にいたのだろうと思います。

もう一つ、自我を簡単に手放すには「全ては神の思し召しのままに」と繰り返し唱えるという方法があります。キリスト教やイスラム教では、日常的に使われている表現だと思います。日本人は、絶対神の存在を想定しにくいかもしれないので、「宇宙」や「サムシンググレート」といい換えても良いかもしれません。ポイントは「自分が」やっているという気持ちを手放して、ただ起きることが宇宙の法則に従って起きているだけ、という気持ちになることです。嫌な人がきても、神の思し召し。うまくいっても、神の思し召し。「自分が」、つまり自我を手放したとき、緊張が緩んで、本来の自分に戻ることができます。

では、どうしたら不安感を軽減させられるのか、具体的な方法を紹介していきましょう。

以前にも紹介したことがありますが、自分の思考をみつめて、自分に対して「そう思っていいよ」と言ってあげる方法です。通常は不安を感じると、その感情を抑えこんだり、逃げようとしたりしてしまいがちです。しかし、抑圧された感情は、心の奥で更に増幅するので、一時的には不安感を押さえ込めたとしても、後々逆襲されます。それよりも、その感情が自分にあるんだと受け入れてあげましょう。自分の思考や感情を全て肯定すると、自然と心が落ち着いてきます。同様の方法として、想念観察があります。これも何度も紹介してきましたが、とても強力な方法です。心配や不安な感情が起きたら、「今、不安な感情が頭のなかを流れた」と感情を流してしまいましょう。感情＝自分ではなく、たまたま自分の中を不安な感情が流れて消えていくんだなあという感じで、「不安感」を自分とは切り離して客観的に見るようにします。肯定する方法も、想念観察も、感情そのものに浸るのではなく、自分の思考や感情を客観的に見るという共通点があります。これはメタ認知といって、自分の感情をコントロールする方法に通じています。メタ認知とは、自分の思考をもうひとりの自分が「今、～という思考が流れたんだなあ」というように、思考している自分を認識すること。自分の思考を客観的に見ることができるようになると、心に余裕が生まれ、緊張が和らいできます。

また別の方法として、未来を正しく思考するという方法があります。１秒先もわからない未来ですが、確率的にはこうなるかも、という表現は可能です。今までの人生で起きたことを、良いこと、悪いこと、普通のことに分けたとすると、それぞれ何％ずつだったでしょうか？

人によって感じ方は様々だとは思いますし、通常ではありえない苦労をされた方もいらっしゃるとは思いますが、ここでは仮に良いこと10％、悪いこと10％、普通のこと80％だと設定してみましょう。もし、この確率でこの先の出来事が起きるとしたら、あなたが感じる不安感は適切なものでしょうか？

不安なときは、この先、良くないことがいっぱい起きるような気持ちがしていますが、実際には10％程度の確率でしかないかもしれません。たとえば「１時間後に起きる出来事は、90％以上がふつうより良いことである」と知っていたら、その程度なら心配しなくても良いか、と思うことができるのではないでしょうか？（つづく）