最近、診察のときに、おつかれママさんたちに宿題としてやってもらっていることがあります。それは「80%できたらOKにする」という訓練です。お仕事、家事、育児、どんなことでも80%こなせれば「それでOKだよ」「大丈夫だよ」と自分に言いましょうという修行です。自己肯定感が高い人にとっては「楽していいなんてラッキー!」なだけでしょう。あえて訓練や修行という言葉を使っているのは、罪悪感を抱えている人にとっては、きちんとしないことが苦痛に感じられるためです。例えば、お仕事なら最後の確認は適当にこなすとか、家事ならあまり使っていない部屋や場所の掃除はあえてしないとか、育児ならご飯の用意は一品減らすといったことです。
育児をきちんとしなければいけないと思っているママさんの場合、育児の手を抜くなんて「そんなことありえない」と感じるかもしれません。お仕事はまじめにしなければいけないと思っているママさんは、「仕事をいい加減にするなんて、他の人に迷惑をかけてしまう」と感じるでしょう。でも、あえてその「ありえない」と思ってしまうことをしてみてほしいのです。ありえないの正体は、罪悪感です。ちゃんとしないと大変なことになる、人に迷惑がかかる、という気持ちです。
ちゃんとしない自分をほめる
80%でOKということは、20%はちゃんとしないということです。「エ~!ちゃんとしないなんてありえない」という心の声が聞こえてきますが、そのモヤモヤとした気持ちを持ったまま、じっと動かない練習をしていただきたいのです。そして、80%できた自分を「よくできたね」「がんばったね」「私ってすごい!」とほめたり、ねぎらったりしてあげましょう。診察中、そう話すだけで、涙ぐむママさんがたくさんいらっしゃいます。それだけ毎日気持ちを張りつめた状態で過ごしているという証拠です。
緊張を作っているのは、きちんとしなくてはいけない、がんばらないといけない、一人でやらないといけない、まじめにしなくてはいけない、などの自分を縛る言葉。そういう想いを強く持っていると、きちんとしていない人、がんばっていない人、一人でできない人、まじめにやっていない人を見るとイライラして、子どもや家族にあたってしまったりします。そして、また怒ってしまったことに自己嫌悪するのです。
どのぐらいがんばるかを決める
「80%できたらOK」の訓練ができるようになってきたら、その日の体調によって、どのくらいがんばるかを決めてみましょう。倦怠感とか風邪気味など、ふだんの50%くらいしか動けない場合ならその80%。つまり、元気なときの40%できればOKだと思うようにしましょう。それもできるようになったら、その日の気分でどれだけがんばるかを決めてみましょう。動こうと思ったら動けるけど、なんだかやる気がでないなあというとき、普段の30%程度にしてみるのです。あえて罪悪感が出てくる状況を作ってみて、そのモヤモヤを感じてみましょう。
その罪悪感を持ってしまった原因は、あなたのお母さんかもしれません。お母さんを幸せにするため、笑顔にするため、振り向いてもらうため、ほめてもらうために、「がんばる」を続けてきたのです。まじめに、きちんと、一人でがんばることで母親に認められる自分になりたいと思っているのです。でも、大人になったあなたには、そのがんばりも罪悪感も必要ありません。母親の目を気にせず、自分の生きたい人生を生きていいのです。やりたいと思ったことを、誰にも遠慮せずやっていいのです。
「やりたいことをやりましょう」と言っても急にはできないものですので、まずは80%できればOKにする、というところから練習してみましょう。
統合医療やまのうち小児科・内科医師
山内 昌樹(やまのうち まさき)
小児科医として勤務していたが、西洋医学の素晴らしさを感じつつ心から望む医療と現実のギャップに悩み、軽度のパニック障害を経験。
YHC矢山クリニックで小児科 を担当し、病気の真の原因を学ぶ。
お母さんの自己肯定感を取り戻すことが家族みんなを笑顔にし世界を平和にすると確信している。
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