とても疲れているのについがんばってしまう人には、共通する過去があります。それは子どものときに、いい子になろう、ちゃんとしよう、早く大人になろう、と努力した経験があることです。表現を変えると、「迷惑をかけてはいけない」「兄弟姉妹の面倒を見ないといけない」「自由奔放な母親、父親を反面教師にして、自分はしっかりしないといけない」「人の役に立たないといけない」「早く一人前にならないといけない」などと思ってがんばってきた過去があるはずです。
子どもは、一段ずつ階段をのぼるように成長発達していきます。首がすわるようになって初めて、寝返りが打てるようになります。寝返りで背骨周囲の筋力がつくことで、おすわりができるようになります。心の成長も同じです。赤ちゃんは、母親の存在を手がかりにして、自分と他人を認識し、母親と父親の違いを見出します。泣くことで不快感を伝えることを覚え、欲求を満たす喜びを知っていきます。それぞれの成長段階で必要な刺激をうけて、それに反応していくことで、それまでできなかったことができるようになっていきます。
がんばってしまう人は、本当はもっと甘えたかった時期に、甘えることを我慢して、がんばってしっかりしようとしてきた人です。また、もっと遊びたかったのに、我慢して誰かの役に立とうとしてきた人でもあります。
甘えたいときに甘えず我慢すると、心にポッカリと穴が空いたような、満たされていない感覚が残ります。その穴は、意識して満たそうとしない限り、何年たってもずっと残り続けます。患者さんに、「いっぱい甘えましょう」と伝えると、甘えずにがんばってきたことが、一種の成功体験となるので、今さら甘えるなんて怖くてできないという反応が起きます。そんなことしたら、今までがんばってきたことが無駄になりそうな気がしたり、甘えることに溺れてしまって抜け出せなくなりそうな気がします。でも大丈夫です。「しっかり甘える」を繰り返すと、いずれ必ず満足して、その状態に飽きるときがきます。次の段階に進むときが必ずやってきます。
「我慢しない」をやり直す
具体的には、もしいま周囲に甘えさせてくれそうな人がいたら、しっかり甘えてみましょう。自分の欲求を伝えてみてください。ただ、多くの場合どうやって甘えるかわからないはずです。発想を変えて、自分で自分を甘やかしてみましょう。当時我慢してきたことを、全部「いま」やってみましょう。当時欲しかったけど我慢したおもちゃを買ってみる。禁止されていた駄菓子やジャンクフードを食べてみる。本当は着たかった洋服を着てひとりファッションショーをやってみる。やりたかった習い事や勉強をやってみる。行ってみたかった場所に行ってみる。もし抵抗が大きい場合は、やりたかったことをすでにやっている人達の動画を見てみましょう。あなたは、欲しい物を手に入れてもいいのです。やりたいことをやってみていいのです。そう自分に許可を出してあげてください。そして、早く大人になろうとした自分に対してねぎらいの言葉をいっぱいかけてあげましょう。「よくがんばったね。えらかったね。すごいね。助かったよ」そして本当は甘えたかった自分に対してホ・オポノポノをしてあげましょう。「無理をさせてきたね、ごめんね。傷ついていたことに気づかなかったね、許してね。こんな自分につき合ってくれてありがとう。本当は大好きだよ、愛しているよ」何度も何度も言ってあげてください。
満たされてきたら、がんばる必要がなくなります。自分の欲求を満たすことに抵抗がなくなります。やりたいことをやる、言いたいことを言うということが自然にできるようになっていきます。