5つの病因論の3つ目は化学物質汚染です。現代人はありとあらゆる場面で、化学物質にさらされています。これからの季節、お子さんに特に注意していただきたいのは、一般的な電気式蚊取り剤と虫除けスプレーです。
「~リキッド」「~ノーマット」などの液体式電気蚊取り剤の有効成分はピレスロイド系の殺虫剤です。ピレスロイドは昆虫等の神経に作用し、哺乳類や鳥類にはあまり作用しないため、安全性が高いと言われています。しかし、動物実験では胎児や幼児期の脳に作用し、急性の害だけでなく、その後の記憶障害や過敏症、運動障害が起きることが分かっています。これから夏場にかけて冷房を使用し、閉めきった部屋の中で液体式電気蚊取り器を使用すれば、空気中の薬剤の濃度はかなり高くなると考えられます。匂いがほとんど無いので気づきにくいことも問題です。喘息の発作がなかなか治まらないお子さんの場合、ピレスロイド系殺虫剤のアレルギーや化学物質過敏症状の可能性がありますので、注意してください。できれば天然の除虫菊だけで作られた蚊取り線香や昔ながらの蚊帳を利用することをおすすめします。
つぎに虫除けスプレーですがその有効成分はディート(DEET、N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)という化学物質で、米軍が兵士用に開発した虫除け剤です。「農薬」や「殺虫剤」ではなく「虫除け」や「忌避剤」と呼ばれるため、安全な物質であるように思いがちですが、子どもの使用でけいれんや行動異常を誘発した例があります。
アメリカでは「長時間塗ったままにしない。子供で約4時間、大人で約8時間程度を目安とする。帰宅後など、昆虫に接触する機会から離れた場合は速やかに石鹸などを使い、洗い落とす」という注意喚起がなされています。日本でもディートの危険性が問題になっており、最近では6ヶ月以下の子どもへの使用は禁止、2歳までの子どもには、1日に1回、2歳以上12歳未満の子どもへは1日1~3回まで、と利用の制限が表示されています。実際の使用はキャンプなど野外での活動の時だけにして、普段は虫除け効果のあるアロマエッセンスなど、人体に害のないものを利用しましょう。
普段の診察で、化学物質の害を最も感じるのは農薬です。湿疹、繰り返す風邪や気管支炎、アレルギー疾患のお子さんの場合、果物や野菜からの農薬を溜め込んでいることが多いようです。特に果物は調理せずにそのまま食べるため、農薬の影響を受けやすくなります。果物に使用される農薬の回数を調べたところ、佐賀県では、イチゴ47回、トマト(促成)60回、メロン15回、温州みかん16回、梨(露地)35回(「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」に基づく化学合成農薬使用回数・化学肥料使用量の県慣行レベル 平成22年1月 佐賀県による)等々、かなりの回数農薬を使用されています。健康に良いと思って食べるフルーツが、健康を害している可能性が高いので、できるだけ無農薬のものを買うようにしてください。ちなみに野菜の農薬使用回数は、ナス60回、きゅうり(促成)64回、アスパラガス20回、玉ねぎ(中晩生)28回、ピーマン28回、かぼちゃ21回、しそ35回等です。
極力無農薬のお野菜を手に入れるようにしましょう。無農薬の果物や野菜がどうしても手に入らないときは、「安心やさい」(ホッキ貝の殻を焼いて粉末にした製品)で表面についている農薬だけでも減らす工夫をしましょう。
山内昌樹
医師 山内昌樹氏 平成19年まで一般小児科医として診療を行うかたわら、統合医療を志しYHC矢山クリニックで小児科を担当。平成22年12月佐賀市内に『統合医療やまのうち小児科・内科』を開院。 医師となってから、重病の患者さんが劇的な回復をすることや子どもの生命力の素晴らしさなどを経験するも、個人差を考慮しない画一的な治療、ステロイド薬や免疫抑制剤の副作用など、西洋医学の限界を感じる。 漢方薬や代替療法と西洋医学を融合して治療を行うYHC矢山クリニックで小児科を担当、病気の真の原因を学び、実際の診療で効果が見られることを経験。 |
統合医療やまのうち小児科・内科 当院では漢方薬を中心に、代替療法、西洋薬を一人ひとりに最も合うように治療します。乳幼児から御高齢とわず、未病の治療や健康維持から、慢性疾患の治療まで幅広く診療を行っています。 〒849-0915 佐賀県佐賀市兵庫町藤木772-3 電話: 0952-33-8500 http://www.yamanouchishounika.jp/pc/ |