「条件を付けない愛情」を伝えるコツは、比較をしないことです。比較する対象は、兄弟姉妹や親戚、同級生だけではなく、幼かった頃の自分であったり、テレビやネットの情報であったり、その子が成長する前と後を比較していたりします。その子をまるごと全部認める、受け入れる気持ちで「大好き」と言ってあげてください。「どんなあなたでも大好き」という気持ちが大切です。極端な例で言うと、たとえ誰かのことを傷つけても、たとえ犯罪を犯しても、たとえあなたが殺人を犯しても、「お母さんはあなたのことを信じる」という気持ちです。実際にこういう対応をすれば社会的、倫理的に問題になる可能性が高いですが、マスコミや世間に逆らってでも「あなたを愛する気持ちは、絶対に変わらない」という覚悟を持ってもらいたいのです。その子が生まれてきてくれた時のことを思い出して、「生まれてきてくれてありがとう」と伝えるのもとても良いことです。時々、昔の写真を出してきて、「小さい時はこうだったよ」「可愛かったよ」と家族みんなで楽しい時間を過ごすのも、子どもの自己肯定感を高めるのに役立ちます。
次に親御さんの自己肯定感について見て行きましょう。世の中には色々な育児方法があり、こうすればいい、こうしてはいけないなど様々な情報があふれています。僕が思う究極の育児方法は、お父さん、お母さん(母なるもの)が本当にやりたいことをイキイキとやって幸せを感じること、その姿を子どもに見せることだと思います。そして「大好き」をちゃんと伝えること。たとえどんなに素晴らしい育児方法であったとしても、親がストレスいっぱいであれば効果は薄くなるでしょう。親御さん自身の自己肯定感を高めることが、育児の秘訣ではないかと思っています。「そうはいっても……このストレスフルな世の中で幸せを感じ、やりたいことをやることなんて本当にできるの?」という声がきこえてきそうです。結局、僕達大人が成長してきた過程で、自己肯定感が減ってしまった時にうまく対処できなかったことが原因になっています。簡単に言うと、子どもの時に傷ついた心を上手に癒せなかったことが、このままではいけない(自己否定)という思いを作り、様々な心の偏りを生み出したのです。誰の心のなかにもある「~であるべき」「~してはいけない」「~しなくてはいけない」「もっと~が欲しい」「~は失いたくない」などの言葉は、子どもの時に受けた心の傷に対して、もう二度と同じ痛みを感じたくないという防衛反応で作り上げてきたものです。そしてこれらのこだわりを積み上げれば、もう心に傷を受けなくて済むから幸せになれると思っているのです。でもそのこだわりをどんなに積み上げてもその先に幸せは待っていません。たとえそれが「より良く」などの前向きに感じる言葉でも、思考で現状を否定している限り、どこまで頑張っても幸せは遠ざかってしまいます。そのままの自分でいいんだ。現状で実は幸せなんだ。変わらなくても大丈夫。と思えた時に求めていた「幸せ」が手に入るのです。
山内昌樹
医師 山内昌樹氏 平成19年まで一般小児科医として診療を行うかたわら、統合医療を志しYHC矢山クリニックで小児科を担当。平成22年12月佐賀市内に『統合医療やまのうち小児科・内科』を開院。 医師となってから、重病の患者さんが劇的な回復をすることや子どもの生命力の素晴らしさなどを経験するも、個人差を考慮しない画一的な治療、ステロイド薬や免疫抑制剤の副作用など、西洋医学の限界を感じる。 漢方薬や代替療法と西洋医学を融合して治療を行うYHC矢山クリニックで小児科を担当、病気の真の原因を学び、実際の診療で効果が見られることを経験。 |