2010年、世界では大きなスポーツの祭典が二つ予定されていますね。まず2月のバンクーバー冬季五輪。そして6月のサッカーワールドカップ。日本選手の活躍が期待されます。
実は去年の12月、ラオスで東南アジアのオリンピックと呼ばれるスポーツの祭典が行われていたのをご存じでしょうか。SouthEast Asia Games、略してSEA Games(シーゲーム)といい、東南アジアの11カ国が参加して、2009年12月9日から18日までラオスの首都ビエンチャンにて行われました。このシーゲーム、今回で開催25回を数えるなかなか歴史のある大会で、ラオスで開催されるのは初めてとのことでした。
ラオスがASEANに加盟したのは1997年。それから10年以上経過しているものの、経済的にも社会的にもまだまだ無名な状態のラオスで国際大会が開催されるとあって、政府はもちろん、街中がシーゲーム熱を盛り上げようと必死でした。シーゲーム2ヶ月前には教育機関がすべて休校となり、学生たちが開会式のパフォーマンスや各競技の進行に従事するボランティアに駆り出されました。また、外国からの選手団や観客を受け入れるためにホテルや道路の建設ラッシュとなり、国民は不便を強いられた場面もありました。しかしながらラオス政府には資金が豊富になく、各競技場等の建設には周辺各国からの援助を求めなければなりませんでした。
シーゲーム種目の中でラオス人に一番人気の種目と言えば、もちろんサッカーです。現地雑誌の注目度ランキングでも第一位を獲得していました。そのほか人気なのは、セパタクロー(竹で編まれたボールを足で蹴り、相手コートに落とす)・ムアイ(ラオス・タイ式ボクシング)・ペタンク(目標に鉄球を投げ、点数を競う)など東南アジアらしいスポーツが多いです。
ラオスという国は農業が主な産業であり、東南アジアの中でもまだまだ貧しいとされている国の一つです。スポーツは広く国民には浸透していません。ですから今回このシーゲーム開催がラオス国民にとってどのようなものとしてとらえられているかは、私が注目していたところでもありました。しかしシーゲーム開催を通じて、国民の生活にスポーツがなじんできたことは感じられました。各競技場では「ラオスがんばれ」と書かれたTシャツを着た観客で溢れかえり、選手たちに力強い声援を送っていました。私が感動したのは、他国同士が競っている試合でも、ラオス人たちは「私たちは開催国なんだから、どちらの国も公平に応援しなきゃ」と、それぞれの国に熱い声援を送っていたことです。また弱者にも優しいラオス人気質なのか、劣勢のチームをみると声援を送っている場面もみられました。
そんな彼らの応援の甲斐あってか、ラオスチームは金メダルを33個獲得、従来の一桁台から大躍進を遂げたのです。開会式・閉会式でも伝統的な装束や、各少数民族の特徴を取り入れたダンスなどが披露され、素晴らしいチームワークを見せてくれました。シーゲーム開催をきっかけに国際社会に大きく名乗りを上げたラオス。今後の発展が楽しみです。
駒崎 奉子
駒崎 奉子氏 ラオス・ビエンチャン在住3年。大学卒業後、日本での社会人経験を経てラオスへ渡り、日本語教師をつとめる。現在は日本人学校で教える傍ら、ラオス語翻訳や文筆活動も積極的に手がけている。 「こまごめ」は大学時代に名字からつけられたあだ名。 |