現代の加工食品には、何らかの形で防腐剤(保存料、殺菌料)が使用されていることは皆さんもご承知だと思います。確かに防腐剤は食品を長期保存するのに大変有効な物質ではあるのですが、反面、無意識のうちに添加物を過剰摂取してしまうこととなり、今や、その蓄積による体害への不安や安全性の問題もあってか、無添加食品や無農薬栽培などが注目を浴びています。よくよく考えてみれば、昔は防腐剤なんてものはなく、いわゆる自然の力を借りた保存法を見出していたのです。
人間は昔、塩水が魚や肉を保存する働きがあることを偶然に発見し、塩漬けにしたり、干したりして貯蔵し、春、夏にとれる野菜も太陽に干して保存しておくと冬や飢饉のときの非常食になることにも気付くなど、徐々に保存の知恵を学びました。そのうち、またまた偶然に今度はオリーブオイルで魚を料理し、そのまま放置していたところ魚が長持ちすることを発見しました。このように偶然と怠惰が食物の保存法を発見してきたわけなのです。
鰯のように腐りやすい魚を、塩漬けや煮干し、あるいはオリーブオイルで保存するなどは、現在もそのまま受け継がれています。と同時に副次的ではありますが、こうして保存したものは自然発酵によって香りが加えられ、もとの素材にない独特の味をつくり出していきます。ピクルスや沢庵やチーズ、キムチや納豆などの発酵食品は、こうした歴史を経て今日に至っているのです。
こういった保存法は、魚介類が食卓の中心であった奈良・平安時代には、食料を都へ運ぶ上でも便利であったわけで、内陸部で海の幸に恵まれなかった奈良や京都に都があったころは、盛んに塩魚類が地方から運ばれていました。そのため、今でも京都の魚料理には干しにしんや棒だらなどを使ったものが多く、スルメや大根の乾葉を利用した煮物など、保存食を巧みに料理する昔ながらの文化が根付いているのです。
山口清道
山口清道氏 日本予防医学研究会理事、フルボ酸・腐食性物質機能研究会会長。大手企業や新聞社、薬剤師会、教育委員会その他の各団体が主催する講演会で講師を務め、『食品破壊の実態』『カルシウム不足の脅威』などをテーマとする講演回数は1000回を越える。 現在は講演活動を休止し、食品科学研究所・BAOBAB代表、株式会社バオバブ代表取締役として、イメージ商品が氾濫する現代における、ほんもの食品の研究開発に取り組む。 【山口清道 氏 開発商品】さらり・すらり茶 / さらり・すらり茶ちょっとマテ! / 元気☆がまんの素 / アミノ酸タブレット |