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中川信男の多事争論

「多事争論」とは……福沢諭吉の言葉。 多数に飲み込まれない少数意見の存在が、 自由に生きるための唯一の道であることを示す

プレマ株式会社 代表取締役
ジェラティエーレ

中川信男 (なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。

【Vol.47】2つの「牛肉事件」に思うこと

投稿日:

この春から、牛肉を巡って2つの大きな事件がありました。ご存じのように、ひとつは激安焼肉店でユッケを食べた多くの人が腸管出血性大腸菌O111によって死亡したり、食中毒症状を起こしたりした事件です。もうひとつは、原発から放出された放射性物質が牛のえさになる稲わらに付着していたことによって、牛肉から放射性物質が広範囲に検出された、という事件です。

この2つの食をめぐる事件から得られる共通の教訓は、「食の安全は消費者自らしっかり勉強し、それを生活に生かすことによってのみ実現される」ということです。前者からの学びは、激安を売り文句にする食品や飲食店の裏側には必ずカラクリがあり、ときとしてそれは危険なものである、という現実です。今回は不衛生な調理が直接の原因とされていますが、ほんとうのところはその価格設定に原因があり、安すぎる食品に飛びつくとリスクが高いという教訓を得たといえるでしょう。もちろん肉を生で食することの危険は知っていて当然のことです。後者からの学びは、放射性物質をはじめとする化学物質は動物において濃縮され、動物食は穀菜食とは別のリスクをはらむ、ということです。今回はたまたま放射性物質が問題とされましたが、あらゆる化学物質は食用にされる生き物のなかで蓄えられるわけですから、直接牛に用いられる薬剤や、稲わらに残留した農薬など、今回は話題になっていない既出の問題も、しっかり知っておいた方がよいことは間違いありません。いずれの場合にも、管轄する行政のアクションは遅く、また何でも禁止すればよいというような単純な事柄ではありませんから、やはり最終的に食べる側が正しく知っておくということの大切さを強調しておきたいと思います。

動物食を巡る問題は、食料としての効率のわるさ、人間が動物を食べることの是非など、他にも数限りなくありますが、本稿でそれをすべて列記するつもりはありません。私が今回フォーカスしたいのは、前述の2つの事件の大きな違いについてです。不潔な加工による健康被害には明確な加害者があり、すでに取り調べを受け、告発されています。業績のために大切なことを知らせなかった複数の会社が、生肉を安く食べたいという「消費者ニーズ」にあわせた結果がこの重大な事件ですから、関与した会社の経営責任は当然問われました。問題は、放射性物質検出のほうです。畜産家さんに放射性物質に関する知識はなく、稲わらにどれだけ放射性物質が付着しているのか知らなかったことを問題視しても何も始まりません。稲わらのような、微細孔があって表面積が大きく、天日干しのために屋外に置かれているであろうものに大量の放射性物質が付着するリスクについては、農政を預かる国や地方の機関が事前に伝え、さらには絶え間ない測定を行わない限り、まずわかり得ないことです。そもそも、原発は安全なのだからと言い続けてきた国が、いざ事故が起きたらそのリスクすら喚起できなかったとは、どれだけ情けない話でしょうか。とくに国の農政を預かるもの、ずばりいえば所轄の官僚の、現場に対する認識不足、想像力の欠如、問題解決能力の低さには驚きを隠せません。食中毒を出せば、経営者たちはその責を問われ、場合によっては投獄されるのです。しかし、現時点で今回の放射性物質の無用な拡散に関して、事故を起こした東電の責任には言及されても、その後の対応を間違った国や官僚の責任は問われていないことに大変な違和感を覚えます。

そもそも原発を軸としたエネルギー政策を推進してきたのは国です。CO排出削減と巧みにマッチさせ、温暖化を防ぐためには原発だというイメージを絶え間なく国民に植え付け、そしていざことが起きたら責任は曖昧なままで、必要のない汚染と畜産家の苦しみや悲しみまで広げてしまいました。実際に投獄されていく経営者たちがいるなかで、国の責任は組織の巨大さゆえに、また曖昧にされていくのです。『戦争において殺人は罪に問われないが、平時の殺人は厳しく罰せられる』のと、とても似てはいないでしょうか。誰かの責任にしておくということが、争いの本質であるがゆえに、この件は私にも責任があると思います。ですから黙っておくことはできず、未来の子どもたちのために原発事故から目をそらさず、小さくとも具体的な行動を推し進めようと決意を新たにしています。

- 中川信男の多事争論 - 2011年8月発刊 Vol.47

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