どうして、ふぐ刺し(てっさ)は薄く切ってあるのだろうか
鮪や鰹などの赤身や、鰤、ハマチ、かんぱちなどの刺身は厚く切ってあるのに、ふぐの刺身は透き通るほど薄く切ってあるのはどうしてだろうか。
ふぐは高級な料理だから薄く切るなどと単純なことからではなく、それは味と旨さに深く関係しいて、「切る」調理の真髄でもあるのです。歯ごたえのある堅さ、あるいは柔らかさ、こく、温度などは味覚にも大きな影響を与え、身の柔らかい魚を薄く切ると歯ごたえがなく旨さに繋がらないし、逆に身の締まった魚を厚く切ると噛み切ることに神経がとられてしまって美味しいという感覚は遠のいてしまいます。刺身を美味しく食するには、鮪などの赤身は厚く、ふぐは薄く切るのが調理のコツなのです。
なぜ餅を切る前に大根を切れと言うのか
世の中には言われて道理だと思うことがたくさんあります。「餅を切るときには、大根を切ってから餅を切るようにすると難なく切れる」という、昔の人の教えもその一つです。理屈を聞いても「昔からそうしていた」の答えが返ってくるだけですが、言われたとおりにやってみると、なるほどと感心するほど上手くいくことが多くあります。
大根にはアミラーゼというでんぷんを分解して麦芽糖に変える消化酵素が含まれています。このアミラーゼが包丁の刃に付着することによって、餅の切り口の表面のでんぷん(粘り)を減らすことによる効果なのです。こうしたことは、偶然の発見から得た知恵だとは思いますが、料理のコツなどは理屈抜きで先人の知恵に学んだほうが賢明ではないでしょうか。
こんにゃくは、なぜ手でちぎるのか
調理で「切る」といえば、たいていは包丁を使いますが、けんちん汁など煮物に使うこんにゃくは手でちぎるのが常識になっています。それは、包丁で切るよりも表面積が広がるからであり、表面が凸凹のほうが、味がしみ込みやすくなるからなのです。特にこんにゃくは、それ自体には格別に味はなく、そのために煮汁をたっぷりしみ込ませるためと、こんにゃくの舌ざわりをいっそう味わうためなのです。けんちん汁のような田舎料理には、なぜか凸凹のほうが味わいと親しみを感じるのは、私だけでしょうか。
山口清道
山口清道氏 日本予防医学研究会理事、フルボ酸・腐食性物質機能研究会会長。大手企業や新聞社、薬剤師会、教育委員会その他の各団体が主催する講演会で講師を務め、『食品破壊の実態』『カルシウム不足の脅威』などをテーマとする講演回数は1000回を越える。 現在は講演活動を休止し、食品科学研究所・BAOBAB代表、株式会社バオバブ代表取締役として、イメージ商品が氾濫する現代における、ほんもの食品の研究開発に取り組む。 【山口清道 氏 開発商品】さらり・すらり茶 / さらり・すらり茶ちょっとマテ! / 元気☆がまんの素 / アミノ酸タブレット |