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鍼療室からの伝言

鍼灸師の西下先生による陰陽や自然食。二十四節気など古来の智恵のお話

圭鍼灸院 院長 鍼灸師
マクロビオティック・カウンセラー

西下 圭一 (にしした けいいち)

新生児から高齢者まで、整形外科から内科まで。年齢や症状を問わないオールラウンドな治療スタイルは「駆け込み寺」と称され医療関係者やセラピストも多数来院。自身も生涯現役を目指すアスリートで動作解析・運動指導に定評がありプロ選手やトップアスリートに支持されている。

華やかさと、しなやかさと

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春は桜の季節。寒い冬の間に溜め込んだエネルギーが一気に花開く姿は、美しくもあり儚くもありというところでしょうか。日本では季節ごとの変化を楽しめるおかげで、感性も育てられるような気がします。冬にしっかりと根を張るからこそ、春の華やかさがある。まさに陰と陽。両面があることを自然から学んでいるのですね。

伝説は一日にしてならず

寒い冬でしたが、平昌五輪の熱き戦いに魅せられましたね。今回、ロシアの選手がOARとして出場したことで、あらためて「国」というチームの重要性や観客に与える影響を感じました。取得したメダルは過去最多の13個と話題の尽きなかった日本。なかでも8度目のオリンピック出場を果たした葛西紀明選手はひときわ輝いていたと感じます。45歳を迎えてなお世界の第一線で活躍するために進化し続け、スキー・ジャンプの本場ヨーロッパで「レジェンド(伝説)」と呼ばれています。体重維持のための断食や、走り込み練習を欠かさないことにより、加齢により衰えるとされるスピードやジャンプ力が落ちていないといいます。しなやかさと軽やかさあっての強さなのでしょう。

葛西選手のジャンプの特徴は、恐怖心を伴うほどに身体を深く前傾させたダイナミックな空中姿勢。1992年のアルベールビルで五輪初出場のころから「カミカゼ・カサイ」と呼ばれていたとか。その後もフォームの改良を続け、42歳でワールドカップ最年長優勝記録を塗り替えた2014年からは敬意を込めてレジェンドと呼ばれるようになったようです。

その後、日本のスポーツ界では、偉業を成し遂げたり高齢でも現役生活を続けたりするアスリートをレジェンドと呼ぶようになっていきました。レジェンドに共通するのは過去に執着せず、変化を厭わない姿勢。より上手になるには、更なる高みに上がるにはどうするかを常に考え、実行に移していく。柔軟な思考で、心にもしなやかさがあるのでしょう。

初代レジェンドは、すでに次を見据えています。「もっともっと練習して進化して、4年後の北京五輪で絶対にメダルを取りたい」と現役続行を宣言し、49歳で迎える9度目の五輪に向けて歩み始めました。早々に帰国し、閉会式を待たずして国内の大会に出場、3月からは海外遠征に出ていきました。限界や衰えとは無縁のようで、まだもっと上手くなれると思い込んでいるし、4年後にはさらに進化しているに違いないと信じ込んでいる。これからもまだ飛び続けていくことでしょう。

無駄なことはない

「天才は1%のひらめきと99%の努力」とはエジソンの言葉。これは努力ではなく「1%のひらめき」の大切さを説いたものだとか。努力を否定するものではなくとも、努力だけしていたらいいというものでもない。努力しつつ考え抜くことも必要で、ひらめきはその先にあるもの。どちらも必要で、努力なくしてのひらめきは、思いつきに過ぎないというところでしょうか。

進化は変化のなかにあります。少しずつ変えていきながら修正し、自分なりの答えは自分で見つけていくしかありません。ただ、答えはひとつだけではなく、自分自身がよし!と思えたことが答え。変わってみようと言われると怖くなったり拒否したくなったりするのは、経験のないことに踏み込むから。だけど今よりも良くなると思い込めることが大切ですね。

禅の言葉に「一大事と申すは、今日只今の心なり」とあります。最も大事なことは今日のただ今、この一瞬一瞬を精一杯の心で生きること、という意味ですね。いま、ひらめいたことは、いますぐやってみる。今日なすべきことは、今日してみる。時間も日々の努力も無駄にしない。レジェンドに近づくための極意ではないでしょうか。

- 鍼療室からの伝言 - 2018年4月発刊vol.127

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