「体が震えて困ります」。こんな相談を受けることがあります。寒い冬に体が震えることもあるだろうとは思いつつ、詳しく話を聞かせてもらいます。継続的に震え続けたり、頻繁に震えが起こったりするようだと、念のために脳神経外科でMRI検査を受けるなどを勧めることもありそうです。
寒いときには体が震えることで発熱させたり、不安や緊張が続くときには震えることで自身を奮い立たせたりするなど、震えることは体を調節するために必要な反応なのです。どんな症状でも、止めるべきものと出しておくのが良いこととがあるものです。
殻を破ってみる
2024年が明けました。一年が終わって、また新しい一年が始まります。今年の干支は「甲辰」。
「甲」は、甲とも読むように、硬い殻に守られていることを意味します。十干では「甲・乙・丙……」と数える一番目で、時代の変わり目や仕切り直しとも考えられます。
「辰」は、龍。十二支のなかでは唯一、伝説上の生物です。昇り龍、登龍門などの言葉に代表されるように、上昇する、成長や出世といった縁起の良いものと考えられます。また「辰」は「振る」「震え」の字に含まれるように、揺れる意味もあります。
これらのことから「甲」と「辰」の組み合わせは、硬い殻のなかで揺れていて、やがて殻を破って出てくる、発芽を待つ種子のようなエネルギーが想像できます。見えないところで動いてきたものが、見えるかたちで現れると考えられそうです。これまで一生懸命に取り組んできたことが、成果となって見えるかたちになるといえます。
今年は、殻を破ってみることを意識しても良いかもしれません。自分でコントロールできるものとできないものはあるけれど、今年の干支が少し力を貸してくれそうな年回りだと考えれば、気が楽になりそうです。
せっかく買った高価なものを、もったいないからと使わないで仕舞っておいて何年も経ってしまった経験はないでしょうか。さらにもったいない気がしますね。自分の努力や積み重ねてきたものも同じです。見えるかたちにしてみないことは、もったいないかもしれません。一歩踏み出してみる勇気がないことと、謙虚でいることとは異なるのです。
冬の早起きの徳
一年の巡りの春夏秋冬。春に芽を出し、夏に伸ばし、秋に収穫し、冬に締めくくる。一般的に、そう考えられています。ただ、冬春夏秋との考えもあります。冬のうちに準備をしておき、春には動き始め、夏に盛んに成長し、秋に収穫を迎える。確かに春になってから始めるのでは遅いような気もしてきます。
禅の言葉に、「彩鳳舞丹宵」とあります。彩鳳という五色の羽毛をもつ鳳凰のつがいが赤い空を舞っている様子。朝焼けの赤く染まった大空に、伝説の鳥である鳳凰が飛んでいくのを見られるのは良いことの起こる前兆だと、おめでたい情景を意味するのです。
四季を通じて、最も空気が澄んでいるのは真冬の朝。日の出前に起き出して、朝焼けの空の色を眺めてみるのも良いでしょう。震えそうになりながら暗いうちに出掛け、少し歩いて体の芯が温かくなるのを感じるころ、空が白く明るくなってきます。日の出の直前から赤く染まってくる色合いの変化は、自然にしか描けないように思います。
もしかしたら、見たことのない鳥が飛んでいくのを見られたり、明るくなった空に浮かぶ雲のなかに龍を見つけられたりして、「早起きは三文の徳」よりも大きな徳を得られるかもしれません。