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インタビュー取材しました。

見えない「モノ」と 向き合うこと
おりい治療院 月光庵 折居 とも江 氏 インタビュー

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京都御所の西、昔の面影を残す地域にある、おりい治療院 月光庵。ここを営むのは、折居とも江さん。あん摩・マッサージ・指圧の技で、日々人々を癒しています。折居さんは、自身の病気と手術、そしてある男の子との出会いを経て、人を笑顔にしたいという気持ちを強くもつようになり、治療院を開きました。そして現在は体のマッサージだけでなく、美顔マッサージも手掛けています。そんな折居さんが大切にしているのが、患者さんの心の内や、人と人とのつながりという目に見えない「モノ」。京都でマッサージを始めてから、現在に至るまでのお話を伺いました。

おりい治療院 月光庵
折居 とも江(おりい ともえ)

20歳のころ、舞妓さんに憧れ京都へ。その後、取得したあん摩の資格を活かして人々の疲れた身体をほぐす道を選ぶ。最近では美顔マッサージを通し、自身と同様に手術痕のために笑顔を忘れていた人に、にこやかになってもらえるよう取り組んでいる。また、一人でも多くの人に前向きになってもらいたいと、理事を務めるNPO法人つくし会を通じて、この技術を仲間に伝達講習をしようと考えている。

笑顔が嬉しいというすべての始まり

――マッサージを始めたきっかけはなんだったんですか?

折居 19歳のとき、叔母の知人で京都で老舗の治療院をやっていた人に、「京都に来たら舞妓さんを見られるよ」と誘われて、舞妓さんに憧れて京都に遊びに来たことが最初のきっかけです。京都にいる間、その人のところに泊まっていて、マッサージという仕事を見て、自分も施術してもらって、こんなふうに人を楽にする仕事があるんだと興味をもち、専門の学校に入りました。私は福岡出身で、最初は免許を取ったら地元で開業しようと思っていたのですが、お世話になった治療院でしばらく働く必要があって、1年くらいのつもりが結局3年ほどいて、独立した後も京都で、出張専門のマッサージの仕事を続けました。最初は舞妓さんを見てみたいから京都に来るという小さなきっかけでしたが、それでも自分が変わるチャンスになるんだと思います。

――京都に来られるまで、ずっと福岡に住まれていたんですか?

折居 1年ほど大阪にいたことはありますが、それ以外は京都に行くまでずっと福岡で暮らしていました。子どものころは一人遊びが好きで、自然が好きで、よく海辺で遊んでいました。暗いところとか狭いところとかが怖いのに、一人でなにかを考えたり、したりするときは、そういうところに行ってしまうというちょっと変なところがあったかもしれません。

――京都で免許を取られて、独立後は出張専門でマッサージを続けられていたなかで、治療院を開こうと思ったのはなぜですか?

折居 よくマッサージに行っていた家のお孫さんがきっかけでした。小学一年生くらいの男の子で、その子のおばあちゃんをマッサージしていたのですが、その子が毎回マッサージのやり方を訊いてくるので、だんだんかわいくなってきて。「こうやってもんであげると気持ち良いからね」と教えるようになりました。すごく覚えがよくて、日ごろからおばあちゃんをマッサージしてあげていたみたいです。マッサージをすると「おばあちゃんがすごく喜んでくれる」と教えてくれました。

そしてある日、私が帰るときにその子が抱きついてきて、「折居さん、いつもおばあちゃんを楽にしてくれてありがとう」って言ってくれたんですね。それが心に響いた。なんだかワクワクして、「このワクワク感はなんだろう」と思いました。その帰り道に信号待ちをしていたときに、ちょうど満月で、月がすごくきれいで。その月を見上げていると、「そうか、このワクワク感はあの子が笑顔いっぱいでありがとうって言ってくれたからやんな。ありがとうって言ってくれて嬉しかったよな。私、この仕事好きなんだ」と感じました。そのときに初めて、はっきりと、私はこの仕事が好きだとわかったんだと思います。それで、「よし、治療院を開こう」って、決めました。

今思うと、治療院を開くというのは、ひとつの流れのなかにあったように思います。もともと、マッサージで人が楽になるのは嬉しかったし、それで人が笑顔になるのも嬉しかった。それでも治療院をもとうとは決めるには、なにかきっかけが必要だったんだと思います。その強いきっかけとなったのが、男の子の一言でした。

人とのつながりが前を向く力になる

――治療院を開こうと決めて、実際に開業されたのはいつですか?

折居 2011年の1月7日です。その直後に3・11大震災があったんです。あまりにも大きな出来事で、すごくショックを受けて、しばらくはご飯も食べられませんでした。でも、私が師匠と思っている人から、自分たちがきちんと生活してこそ被災地の支援ができるんだといわれて、ネガティブになったらだめだと思いました。それで、「なにかやらなくちゃ」という気持ちが強くなりました。

被災地では体の調子が悪くなっている人がたくさんいて、そういう人たちの側に行きたいとも思いましたが、現地は混乱していましたし、目の悪い自分には難しかった。なんとかここからでも応援したいと、治療院を続けていました。当時、被災地でなくても、テレビの報道などでネガティブになっている方が多かったです。震災から10日ほどは、世間の自粛ムードもあり、患者さんがまったく来ませんでしたが、10日くらい過ぎたころから少しずつ患者さんが来るようになりました。そういう人に少しでも楽になってほしい、笑顔になってほしいと思いました。この3・11大震災のときのことも、治療院を続けていこうと思った大きなきっかけとなっています。

美顔マッサージ。折居さんが「幸せあわあわ」「幸せ石けん」と
呼ぶ、泡立てた石けんでパック。優しい感覚に癒される

――折居さんは福岡県ご出身ですが、福岡県でも2005年に大きな地震がありましたよね。そのときも大変だったのではないでしょうか?

折居 そのとき私は京都にいて、地震直後はどうして良いかわかりませんでした。親戚もみんな福岡にいるので、とにかく心配で、電話をしてなにか欲しいものはないかと聞いたのですが、姉や従姉たちが「よかよか」と明るい声で答えるんですね。その声に涙があふれました。

私が育ったのは福岡県の志賀島というところなのですが、地震の影響で、実家も親戚の家も潰れてしまいました。子どものころの写真など、思い出もなくなってしまったんです。それなのに、行政からの支援はほとんどなく、支援金として35万円が出ただけでした。無性に腹が立ちましたし、同じような思いをされている被災者の方は多いと思います。

――そういった経験があると、3・11大震災はなおさらショックな出来事だったと思います。京都でマッサージのお仕事をされるなかで、福岡に戻りたいと思ったことや、仕事を辞めたいと思ったことなどはありますか?

折居 2000年ごろに大きな病気をして手術を2回したのですが、顔や体に手術痕がたくさん残りました。その直後は「こんな仕事やりたくない」と免許証を捨てようとまで思いました。でも、友達がなだめて止めてくれたんです。そのときは結局、生きていくためには食べていかなくちゃならないと仕事を続けました。そこからいろいろな出会いがあって、たくさんの人に助けられて治療院を開くことができて、ここまで続いたというのは、やっぱりこれが天職だったのかもしれないなと思っています。

――体のマッサージだけでなく美顔マッサージを始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

折居 美顔マッサージを始めたのは、私自身の経験がきっかけです。病気をして手術をした後、手術痕が気になって、どうしても気持ちがうつむき加減になっていました。そのときに、同じような経験をしている人たちのことを考えるようになりました。自分と同じように気持ちがうつむいて、笑顔を忘れてしまった人たちに、にこやかになってほしいと。

そのためには、体のマッサージだけでなく、美顔マッサージが必要だと思いました。手術痕や、シミやシワなど、自分が気になっているところが少しでも薄れたら、自分に自信をもち、前向きになれるんじゃないだろうかと。

――実際に美顔マッサージを始めて、患者さんの反応はどうでしたか?

折居 体のマッサージだけのときよりも、患者さんの笑顔が違います。先日いらっしゃった年配の女性も、美顔マッサージが終わって「このへんシミ消えたよ!」「このへんちょっと白くなったんじゃない?」と訊かれて、「ほんまや、私もそう思う」と答えると、すごく嬉しそうにされていました。

マッサージを受けてただ喜んでくれるだけじゃなくて、「今までつらかった、でも話せる人がいなかった。聞いてくれますか?」って、泣かれる患者さんもいます。目に見える部分だけでなく、目に見えない部分がもっと深く傷ついているんですね。私は今、こうやってマッサージを笑顔でできていますが、私一人だけが笑顔になるんじゃなくて、そういう人たちと一緒に笑顔になって、前を向いて進んでいきたいです。だから、今回こうやって話をしていますし、私の写真も撮ってもらおうと思いました。ずっと気持ちがうつむき加減だと、「私なんかだめだ」って思ってしまって、なかなか外出する気にもなれないんです。でも、「私も手術痕があったけど、どう?」って笑顔でいる私を見せて、周りから働きかけることで、うつむいていた人たちの気持ちが変わるかもしれないと思っています。

――今日、美顔マッサージを体験して、なんとなくですがわかる気がします。たっぷりの泡やオイルのマッサージ……ただ体が気持ち良いだけじゃなくて、心が軽くなる感じがありました。患者さんに接して、「笑顔でいてほしい」という折居さんの気持ちに沿う、そういった「物」を選ぶときに意識することはありますか?

折居 化粧品などは物質的な「物」ですが、それ以上に、人と人とのつながりという、目に見えない「モノ」を大切に考えています。私がマッサージを始めたのも、治療院を開業したのも、美顔マッサージを始めたのも、人と人とのつながりがあって、いろいろな人に助けてもらいました。

たとえば、美顔マッサージには「mOrganics(エムオーガニクス)」の石けんとオイルを使っています。これも、美顔マッサージを始めようと思って、どんなものを使うと良いのか詳しい人にいろいろ訊いて教えてもらったもののなかから、私自身も使って良いものだと感じて、施術にも使うようになったものです。

治療室の一角。美顔マッサージにはプレマでも扱いのある「m Organics(エムオーガニクス)」の石けんやオイルを使っている

――私自身、取材をしていて感じますが、人と人のつながりで、また新しい出会いもできますし、変化も起きますよね。

折居 実は、今回の取材でなにを話せば良いんだろうと、最初は悩んだんです。でも、難しく考えなくても、元に戻れば良いんだと気づきました。あん摩も美顔マッサージも、困っている人や悲しい人をなんとかしたくて始めたことです。そのことに気づいて、気持ちが楽になりました。人と会ったり、話したりすることで、そうやって新たに気づかされることもあるなと思います。だから、これからもいろいろな人に会ってみたいです。

それのなかでも、笑顔を忘れている人をにこやかにしたいという、自分が最初にやりたいと思ったことは、これからもずっと大切にしていきたいと思っています。

- 特集 - 2019年9月発刊 vol.144

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