手で触れて身体の状態を把握する「手感力®」によって患者さんに最適な治療やセルフケアの方法を提供する、鍼灸師の中間善也氏。開院当初から電磁波対策を中心とする、身体が楽になる空間づくりにも注力しています。2023年の一年間、京都三条にある電磁波を遮断した「オルタナティブアース®・シールドルーム」で施術をした体験と、そこで得た気づきについて話を伺いました。
治療院の中に押入れ程度の広さのシールドルームを設けた中間先生。「まずは有害電磁波の影響を受けない空間を体感してほしい」と話す。
リラクゼーションスペースCOCORO こころはり灸治療院 院長
中間 善也(なかま よしなり)
奈良県生まれ。はり師、きゅう師。幼少期から空手や剣道などの武道に親しむ。日本拳法三段で、大学時代に東日本で個人3位、全日本で団体戦優勝の成績を残す。診療所や整骨院での勤務を経て、2006年こころはり灸治療院を開院。独自に開発した「手感力®」を広めるため、手感力®協会理事および講師として、治療以外にも講座の開催や商品開発もおこなっている。
リラクゼーションスペースCOCORO こころはり灸治療院https://www.cocoro-acupuncture.com/
ツボの反応で
心身の状態を把握する
——鍼灸師になった経緯を教えてください。
幼少期から武道を習っていて、高校時代に日本拳法を始めました。大学3年のとき、大切な大会の前に足を怪我して出場できず、悔しい思いをしたのですが、その治療のために初めて鍼灸院に行きました。どの整形外科を受診しても治らなかった痛みを、その先生が手で身体を触って確かめながら、怪我の状態を的確に把握して治してくれたことで、こんな治療法があるのかと感動したんです。僕のように痛みや不安から解放されて楽になる人が増えたらと思い、大学卒業後に専門学校で学び、鍼灸師になりました。以来、治療者として「手で触れてわかる」ことの奥深さを探究し続けています。
——手で触れて身体の状態がわかるというのはどういうことですか。
手でツボの反応を感じ取ることです。皮膚の表面には、ごく軽い力で触れると、張りがある部分とたるみがあって沈むところがあります。沈むところというのは、その下の筋肉が緊張して血流が悪く、硬くなっています。それが治療のポイントでもあるし、身体の不調を教えてくれるポイントでもある。そのツボの反応がなぜ皮膚に現れるかというと、皮膚の表面には汗腺や、立毛筋という鳥肌が立つ筋肉、動脈、毛細血管などがあるのですが、それらはすべて交感神経が支配しています。身体が疲れているときや不調のときは、体内がリラックスしていない状態なので、それが神経の反射を返して交感神経支配である皮膚に反応が出ます。自分の身体でわかりやすいツボを触ってみると、身体がつらいときは沈む範囲が広く、逆に身体がリラックスしているときは沈む範囲がなく張りがあるか、ごく小さくなっています。それほど皮膚は身体の中の状態を明らかに教えてくれています。触れてわかる力、それを独自に「手感力®」として、患者さんの治療に役立てたり、セルフケアの方法としてお伝えしたりしています。
——先生は、身体がリラックスできる空間づくりも追求していらっしゃいます。院内に有害電磁波を遮断するオルタナティブアース・シールドルームを作ったのはどんな思いからですか。
開院当初から、どうしたら空間を快適にできだろうかと常に考えています。ツボの反応をみると、自分にとって心地いい場所や空間にいると反応が出なくなるか、小さくなるんです。それは、その場自体が身体の交感神経の反応を抑えているということ。そう考えると場や空間が心身の健康に与える影響はとても大きいのです。交感神経を抑えて副交感神経に切り替える方法をいろいろと研究していて、有害電磁波対策に行きつきました。初めは有害電磁波の影響を変えるガンマシリーズなどのコンセントやシールを利用していたところ、あるとき中川社長に、対策には「変える」と「減らす」があると聞いて、なるほど、減らすという発想はなかったなと。そこで京都三条に作られたオルタナティブアース・シールドルームに入ってみたところ、ツボの反応が小さくなったので驚きました。患者さんにも入るだけで楽になる体験をしていただきたくて、院内でロッカーにしていた空間をシールドルームに作り変えたのです。ただ、そこは大人が一人座れるぐらいの広さ。入るだけでも効果はありますが、もしシールドルーム内で施術できたら理想的だと考えていました。
有害電磁波を遮断すると
身体に起きる変化
——そこで実際に昨年一年間、部屋ごと有害電磁波(極低周波・高周波)を遮断したオルタナティブアース・シールドルームを借りられたのですね。どんな体験でしたか。
私たち現代人の身体は、電気環境の影響や、低周波、高周波、電場、磁場といろいろな有害電磁波の影響を受けていますよね。実際、目には見えないだけで、電磁波過敏症の方や、Bluetoothやスマホで頭痛がする方もいます。オルタナティブアース・シールドルームは高周波も遮断する点が興味深かったです。スマホもノートパソコンもスマートテレビも電気自動車も普及していなかった、昭和30年代の空間を再現している。それを体験してみたいという思いで、そこをお借りすることにしました。
僕が施術をするうえで最も重視しているのは、患者さんの皮膚表面のツボの変化です。施術によってツボの反応が小さくなるかどうかが効果判定になります。でもシールドルームに入ると、まだ治療してもいないのに入るだけでツボの反応が小さくなるんです。室内の電磁波を電磁波計測器で測ると数値がいっきに下がりますが、それとツボの反応が小さくなることと相関はあるのだろうと思います。高周波が及ぼす皮膚の変化、つまりは交感神経の興奮を抑える空間といえるでしょう。
僕はまず、患者さんに部屋に入る前と後に呼吸をしてもらって、違いを体感してもらいます。呼吸はとてもわかりやすい指標で、呼吸するための横隔膜や肋間筋などの筋肉が多いので、交感神経が優位で緊張していると、呼吸が浅くなります。でもリラックスすると筋肉自体が緩むのでより呼吸がしやすく、深くなるんです。みなさん部屋に入ると呼吸が楽になるので、シールドされた部屋は筋緊張が緩む空間だといえます。あとは、ストレッチをすると、シールドルーム内のほうが柔軟性が上がるということを体感できるはずです。
そしてなによりも、施術する僕自身がとても楽です。たとえば広がった痛みの範囲がシールドルームの効果によって3分の1ほどに小さくなったところから治療をスタートできるとすると、僕はピンポイントで治療できて、患者さんは治療時間が短くなり、お互いに負荷が軽くてすむのです。
僕の体感では、シールドルーム内では嗅覚や味覚が鋭くなり、食べ物を美味しく感じられます。そして視界もクリアになり、ものが普段より鮮やかに見えるようになります。リラックスすると呼吸がしやすく、唾液もさらさらでしっかり出るので、緊張して呼吸が浅いときよりも美味しく感じられるのです。意識せずとも、キャンプのときに外で食べるごはんと、パソコンに囲まれた職場で食べるごはんとでは、味が違うのと同じです。身体がリラックスすれば、ホルモンや消化酵素など体内の働きにも違いが出てくることでしょう。
——まず身体の土台があっての治療ということですね。空間が身体を整えるのに役立っている。
はい、身体、精神ともにリラックスできる環境は大きなアドバンテージになります。こんな空間が、企業や病院、介護施設、スポーツ施設などあらゆる所でも活用されたらいいですね。治療だけでなく、人のあらゆるパフォーマンスが向上するのではないでしょうか。
——患者さんからはどんな反応がありましたか。
患者さんのなかには不眠症などのストレス症状で悩まれている方がいらっしゃいますが、シールドルームに入るとすぐに眠くなるようでした。普段、有害電磁波に晒されているとその害についてはわかりづらいけれども、それを遮断した空間に入ることによって、明らかな身体の変化を体感されるようです。それでも大人は「このあと仕事だな」などと、先のことを考えて思考に偏りがちですが、その点、子どもの反応はとても素直です。いつも小児鍼をしている子がいて、施術中はよく喋るのですが、シールドルームで施術すると5分もしないうちに寝ます。子どもは大人よりも体内の水分量が多いですし、身体も未熟なので、有害電磁波を遮断したときの反応がわかりやすいのかもしれません。ただ、部屋を出るとまた有害電磁波が飛び交っている環境に戻ってしまうので、各家庭に押入れ程度でいいのでシールドルームがあるといいなと思いますね。
心地よい環境に
身を置くこと
——眠ってしまうというのは、いい環境が身体をリラックスさせるのですね。
環境といえば、先日、伊勢神宮に行ったんです。これだけ大勢の人が集まるのだなと驚きました。内宮に入る手前に五十鈴川があり、橋を渡る手前で自分のツボの反応に触れて、渡った後にまた触れてみると、反応が小さくなっていました。身体が心地よさを感じている証拠です。やはり伊勢神宮のように心地いい空間を、人は知らないうちに求めているのだなと思いました。もちろん携帯電話はつながるので高周波は飛んでいますけど、いい気が満ちた場には人をリラックスさせる力があると感じます。ひょっとすると、シールドルームは神社のような空間なのかもしれない。僕は以前、南の島のビーチにあるコテージで施術できたらと思っていました。非日常だしすごくリラックスできて、治療の効果も高まりそうですよね。自然の多い場所では有害電磁波の害も少ないことが多いです。でも毎回、時間やお金をかけてそういう場所に行くのは難しい。シールドルームは街中にありながら究極にリラックスできる、都会のパワースポットだと思います。この時代で、有害電磁波をほぼ完全に遮断する空間は世界中探してもほかにないんじゃないでしょうか。
——有害電磁波対策をする大切さについて、今後どう伝えていきたいですか。
時代の流れで、ポケベルに始まり、ガラケーが登場してスマホに変わり、現在ではリモートワークやオール電化が浸透しています。電磁波の環境は徐々に変わってきているので、例えて言うと、僕たちは茹でガエルのような状態で、知らないうちにそういう環境に慣らされているわけです。でも人の身体はそんなにすぐに適応できないので、常に交感神経がたかぶっている状態となり、さまざまな不調が出てきています。不眠症の方に話を聞くと、寝る前にスマホをコンセントにつないだまま枕元で動画を観て、そのまま寝ていたりします。高周波などの有害電磁波が交感神経に作用して身体に与える影響についてまだ十分に知られていないので、これから伝えていきたいと思います。
白血球の中には顆粒球とリンパ球があって、交感神経が興奮すると活性酸素の発生のもとになる顆粒球が増えます。すると炎症を起こしやすくなり、ひいては病気にもつながっていきます。世の中にはそれに対処する健康食品や食事法などがたくさんありますが、それで炎症が解消したとしても、電磁波の影響が強ければまた交感神経が優位に戻ってしまいます。環境の面で、根本的な解決にはなっていないのです。やはり生活環境や生活習慣に目を向けることが大切だと思います。
——シールドルームに入ることで、それに気づくことができそうですね。
患者さんたちと接していても、シールドルームで呼吸のしやすさを体感したり、身体が楽になったりするのを体験してもらうことが、有害電磁波対策に目を向けてもらうきっかけになっていると思います。自分で触って、感じて、楽だなとわかることで、少しずつこれまでの習慣を変えていける。その役割として、シールドルームをもっと利用する人がいたらいいですね。昨年の一年間で、京都のシールドルームでの施術は終了しました。有害電磁波を遮断することによって得た気づきがたくさんありますので、これからの施術に活かしていきたいと考えています。これからの僕の夢は、有害電磁波を遮断した鍼灸院を持つこと。施術を通して不調の原因を理解してもらい、積極的に有害電磁波対策をすることによって、一人でも多くの方がより健康でより幸せに過ごせるように、サポートしていきたいです。