暑い夏は、自然も人もエネルギッシュになれる季節。そんなあなたのエネルギーをさらに魅力的にするご提案です。
バラの魅力を探る 奥出雲薔薇園取材レポート |
深い紅とビロードのような質感が独特のバラ「さ姫」。
そのさ姫を生み出したのが、島根県大田市の奥出雲薔薇園。
女性にとって特別な存在感のあるバラ、その中でも魅力的なさ姫の源泉を探りに、2014 年5 月、満開の薔薇園を訪ねました。
神話の国の薔薇の園へ
収穫されたさ姫。
ひとつひとつ人の手で丁寧に摘み取られます。
神話の国、出雲に咲く薔薇「さ姫」。そのさ姫を育てている、奥出雲薔薇園。一般に公開されている観光用の薔薇園ではないため、今回の取材はかなり役得でした。薔薇園というと何となく山奥のイメージがあったのですが、奥出雲薔薇園は、何気ない街の風景の中に、突然現れます。園内に入るとふわりぐるりと薔薇の香り。主に育てられているのは、奥出雲薔薇園の代表格である「さ姫」と、もう1種、「アップルロゼ」という品種です。
さ姫の、独特の深い赤と香り、高貴な質感。この存在感は、他にないものです。収穫は、小さすぎず、大きくなりすぎる前に。ひとつひとつ丁寧に、手作業で摘み取られます。摘み取られた花の横には、新しい花の芽が出てきます。さ姫は年5回ほど花を咲かせてくれるそうです。ただし、花をつけるというのはとてもエネルギーの要ることで、そのために必要な栄養をきちんと与え、土の状態を整えることは欠かせません。
同じさ姫でも、収穫の時期によって春バラと秋バラと呼ばれます。気候の違い特に秋は春に比べ寒暖差があるため、これが花の状態に影響します。春バラは鮮やかな赤でフレッシュな香り、秋バラは深い赤で花が小さめ、その分香りが凝縮するそうです。
アップルロゼは、色も香りも味もかわいらしさのある品種。
もうひとつの品種である、アップルロゼ。こちらは「ロゼ」の名前の通り明るいピンク色で、さ姫より大ぶりの、かわいらしい印象を受ける花。香りはさ姫より甘い感じ。食用としても甘みが特徴で、デザートなどに重宝されているそうです。
そう聞くと、やっぱり、食べてみたい!花びらを一片頂いて、口にしてみました。最初は、植物らしい瑞々しさ。そして、確かに、甘い!
たとえるならば、皮付きりんごに似た甘さ、でしょうか。
ちなみに、さ姫も糖度でいえばスイカと同じぐらいの甘さがあるそうですが、さ姫の赤というのはポリフェノールの赤で、その分渋みが加わります。こちらは、ブドウの皮のような味だとか。これはこれで、お肉料理などに重宝されているそうです。
アップルロゼは、さ姫ほどは頻繁に花をつけず、収穫は年に2回ほど。また、一気にたくさんの花をつけるので、収穫が追いつかないほどなのだとか。
確かに、このときも、すごい勢いで花がついていました。
さ姫とアップルロゼは成分的にも違いがはっきりしています。さ姫にはアントシアニンが豊富です。そのため抗酸化力が強く、さ姫の花びらは痛みにくいのが特徴です。アップルロゼにはアントシアニンがないため酸化しやすく、エキスを抽出しても、最初はピンク色なのですが、すぐに黄色に変わってしまいます。ピンク色の天然薔薇エキスというのはなかなか難しいようです。
美しさは自然との共生から
奥出雲薔薇園は、現在3ヘクタールほど。試作や研究を繰り返しながら、園は少しずつ広がってきました。薔薇の育つ園の端では、ハマナスやノイバラなども育っていました。これらもまた新しい試みにつながっていくかもしれません。
出雲という土地は、山間部で、寒暖差があり、雨が多く、そういった点が薔薇の栽培に適しているそうです。奥出雲薔薇園では、土の状態が、薔薇にとって常に最適であるよう手入れをされています。土は、薔薇の家のようなもの。乾きすぎず湿りすぎず、薔薇が根を伸ばしやすく、微生物がしっかり活動している土が、薔薇にとっては良い家といえます。自然のサイクルが健全に循環するよう、稲藁を敷いたり、製品化で使用した後の薔薇の花びらを土に戻したりして、工夫がなされています。
農薬を使用しないため、虫がいることもありますが、奥出雲薔薇園では、虫は駆除する対象ではなく、共存するものとしてとらえています。良いものに虫がつくのは仕方ない、選別のときにはごめんなさいと除く作業はありますが、最初から敵視しているわけではありません。園のなかでは、ミツバチやクマンバチが蜜集めに勤しんでいたり、カエルが飛び跳ねていったり、いろんな生き物の暮らしが、ありありと感じられました。